第16話 精鋭と決意



「なぁ、最近おっさんどうしてるかな?」



城山しろやま学院大学のカフェテリア。

丸いテーブルを囲って3人が話していた。



「確かに、最近私たちテスト期間で会えてなかったもんね」


「どうだ? 今週の土曜日おっさん誘ってダンジョン行かないか?」


「私はいいわよ! 熊くんは?」


「……いく」


「よしっ!決まりだな。じゃあ俺からおっさんに連絡しとくぜ」


「よろしくー」




 ◆ ◆ ◆




———探索者協会 日本支部




「…ついに揃ったか」



探索者協会会長、亜門あもん宗次郎そうじろうの目の前には総勢28名の探索者がいた。

亜門の目には探索者全員のステータスが見えている。



えんに負けるも劣らない実力者は全部で4人か)



スキル【鑑定】が使える亜門は、自分の目を通して人のステータスを見る。




——————


【名前】心海しんかい新太あらた

【レベル】 52/100


【H P】 1500/1500

【M P】 3700/3700

【攻撃力】 300

【防御力】 600


【スキル】 


『水魔法(上級)』『水聖すいせいの泉』


——————





心海新太。

上級の水魔法を操り、スキル『水聖の泉』でHPの回復薬を作製することが可能。

水魔法の操作は、日本で1、2位を争うほどの使い手と言われている。





——————


【名前】斉藤さいとう力人りきと

【レベル】 50/100


【H P】 2500/2500

【M P】 550/550

【攻撃力】 3000

【防御力】 2800


【スキル】 


『身体強化』『格闘術』『無手の盾』


——————




斉藤力人。

50人に1人が授かる『身体強化』。

そのスキルを自由自在に操り、『格闘術』と組み合わせることによって強力な戦闘スタイルを確立できる。




——————


【名前】八重やえ美紀みき

【レベル】 48/100


【H P】 2800/2800

【M P】 5300/5300

【攻撃力】 700

【防御力】 1500


【スキル】 


重力魔法グラビティー』『千里眼』『探索サーチ


——————




八重美紀。

国内最大規模の自動車会社、「YAE」の令嬢。

世界で初めての『重力魔法』を授かり、5000を超えるMPで敵を圧倒することができる。




——————


【名前】西園寺さいおんじ鏡花きょうか

【レベル】 54/100


【H P】 3200/3200

【M P】 3500/3500

【攻撃力】 2800

【防御力】 1900


【スキル】 


万物創造クリエイティブ(上級)』『身体強化』


——————




西園寺鏡花。

日本探索者協会のアイドルで、モデル、女優でもある。

『万物創造』を使い、ダンジョンではモンスターに効かないはずの拳銃や爆薬などを瞬時に作製することが可能。

彼女のスキルで作られた武器はモンスターを殺傷することができる。




会長の目はその一人一人を捉えた後、最後に才波炎を見る。

その男のステータスはおそらくこの会場の誰よりも強い。




——————


【名前】才波さいばえん

【レベル】 61/100


【H P】 8500/8500

【M P】 10100/10100

【攻撃力】 9800

【防御力】 6700


【スキル】 


『炎魔法(帝級)』『身体強化』『思考加速』『高速回復』


——————




これがランク1探索者と呼ばれる者のステータスだ。

ランク2探索者とは比べ物にならないステータス値にスキルの数は4つ。

一般人からすると、彼はおそらく化け物だ。

だが、亜門は気がかりでならなかった。



自分が愛して止まないゲームを作った人物、九条カイト。

その人と共に突然現れたゲームの中のキャラクター、ザック・エルメローイ。

協会に入ってきた瞬間に感じた強力なオーラ。

その正体はザック・エルメローイだった。

いざ彼を目の前に『鑑定』を使った亜門。

そこに書かれていた内容、それは———




——————


【名前】ザック・エルメローイ

【称号】剣■

【レベル】 ■■■/100


【H P】 ■■■0■/■■■0■

【M P】 1■00■/1■00■

【攻撃力】 ■■0■■

【防御力】 2■000


【スキル】 


『剣s[/..』『次s”斬’(』『!()’0”』『完全!)(“=』『!9)’=の加護』


——————




———というものだった。

ステータスがほとんど文字化けしており、見ることが困難。

だが、亜門は感じ取った。

ザック・エルメローイは明らかに才波炎よりも強いのだと。



これは勧誘すべきだと思った亜門。

九条とザックに契約金として10億円、精鋭チームの仲間と共に1階層攻略するごとに2億円追加。

また、ダンジョン攻略を目指す上で必要なものは全て協会が用意するという条件もつけた。

これらを勧誘する条件とした。



だが、それから1週間。

亜門を訪ねた九条とザックは、今回の精鋭チームへの参加を断った。

その理由を聞いた亜門。

手には汗を握り、なぜあの条件で断ったのか疑問に思った。

九条の口から出た答え。

それはあまりにも意外なものだった。



「俺、強くなりたいんです。それに、俺にはもう仲間がいるので」



そう言って、九条とザックは亜門の部屋から出た。

九条の目は一切濁っておらず、透き通った目をしていた。

まるで、自分の作りたいゲームを作ってワクワクしていたあの頃のように。

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