第8話 大学生とパーティー



「バチカン市国がモンスターに占領されたとのことです!」



俺は部屋のリビングでニュース番組を観ていた。

どこの局もバチカンのニュースで持ちきりだ。



「次に消滅を予想されるモナコでは、すでに86%の住民が近隣諸国に避難したとされています」



バチカンの次に国土面積が小さいのはモナコだ。

おそらく1年後に消滅するだろう。

よくよく考えてみれば、人類は長期的に見たら絶滅すると思う。



今はまだ消える国の住民は、他国に避難できる。

しかし、194年もたてば全世界をモンスターが占領することになる。

考えただけで寒気がしてくる。



「物騒な世の中になったもんだなぁ」



いや、これは人類が受け止めるべき事実か…。

俺がどうこう思ってどうにかなる問題じゃないしな。

そう思ってステータスを開いた。



「ステータス」



———————


【名前】九条 カイト 

【レベル】 5/100


【H P】 130/130

【M P】  170/170

【攻撃力】  45

【防御力】  70


【スキル】 『オーヴァーロード』(Lv.0)


—————————




初めてのレベルアップから21日。

やはり他の人と比べると、ステータスの伸びが悪い。

それに『オーヴァーロード』というスキルも進展なしだ。



あれから毎日のようにダンジョンに行って、2階層あたりでモンスターを狩り続けている。

会社をクビになって探索者という職業に就いてみたが、案外稼ぎは安定していた。



朝の10時から夕方の5時までダンジョンにこもって2万円弱稼げることがわかった。

土日を休みにしても月々30万くらいは稼げる。

その上、探索者ライセンスで色々と優遇される。

正直ちょっと楽しくなってきた。



俺が運よく抽選に当たったあの日から随分と日が経った。

最初は混乱を避けるために抽選という方法で初期登録を行なっていたが、今となっては行ったその日に登録ができるようになった。

そのおかげで、日本での探索者人口は一気に増加した。



「今日はあいつらと2階層に行くか」



あいつらとは、10日前くらいに知り合った大学生たちだ。

基本的に2階層以降は、パーティーを組んで行く決まりとなっている。

その募集サイトで俺はあいつらと出会った。



「そろそろ準備するか」



俺はクローゼットから黒のアンダーアーマーを取り出した。

アンダーアーマーとは、探索者協会が開発した防御力を上げるアーマーのことだ。

ゴムのように伸縮自在で、着心地もかなり良い。

それを着た状態でステータスを開いてみた。



———————


【名前】九条 カイト 

【レベル】 5/100


【H P】 130/130

【M P】 170/170

【攻撃力】 45

【防御力】 70(+50)


【スキル】 『オーヴァーロード』(Lv.0)


—————————




こんな感じで防御力の横に(+50)という表記がされる。

アーマーの仕組みはよくわからないが、どうやらダンジョンに生息するモンスターの魔核からできているのだという。



———神楽坂駅



「九条さん!ここです」


「あぁ、俺から誘ったのに遅れて悪かったな」


「全然いいですよ!ロンドカフェ奢ってくれるのなら」



ロンドカフェ。

それは最近ちまたで話題になっているおしゃれでお高いカフェだ。

生意気な奴らだぜ。



「おいおい、おっさんは貧乏なんだぞ」


「嘘つけ〜」



俺の目の前に立っている3人。



元気で明るい雰囲気で俺に奢ってくれとか言っているのが、三上みかみナオ。

その横で「九条さんに失礼でしょ!」って言っているポニーテールの女の子が、やすさくら

その2人の後ろに突っ立っている2メートル近い高さで無言の男が、熊谷くまがいケント。



「はいはい。奢るから今日はよろしくね」


「おぉ!さすが九条さんだぜ!」


「もうぅ!すみません、九条さん」


「……」



熊は相変わらず無言だ。

さて、今日の目標は2階層のボスモンスター討伐かな。



ダンジョンが解放される前、自衛隊が頑張ってやっと辿り着いたのが10階。

しかし、ダンジョンを民間公開したらあっという間に探索者たちはダンジョンを登っていった。

現在東京ダンジョンは、20階層まで突破されている。



それに伴い、日本にも1級探索者が1人誕生した。

爆炎の魔道士と呼ばれている男、才波さいばえんだ。

炎系のスキルと名前が被っているのはもう奇跡だろ。

俺なんか到底追いつけない存在だ。

噂によると、才波さいばえんはすでに協会から10億円近くもらっていると聞く。

まあ、俺は俺なりにゆっくりと攻略して行こうと思う。



「さあ、俺らの今日の目標は2階層ボスの突破だ。落ち着いて攻略していこう」



「「はいっ」」


「おう」

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