第6話 レベルアップとプレイヤー
【レベルが上がりました】
突然それは頭の中で鳴り響いた。
まさか!と思いステータスを開く。
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【名前】九条 カイト
【レベル】 1/100
【H P】 25/25
【M P】 34/34
【攻撃力】 9
【防御力】 13
【スキル】 『オーヴァーロード』(Lv.0)
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おぉぉおお!
まだスライム5匹しか倒してないのにレベルが1上がってる!
ステータスも全体的に少し上がったようだ。
しかし、『オーヴァーロード』というスキルはまだレベル0のままだ。
「よっしゃぁ!レベル上がったぜ!」
「私も上がった!」
周りから歓喜の声が聞こえてくる。
どうやら他の人たちもレベルが上がったようだ。
まあゲームでもそうだが、最初のレベルは案外すぐ上がるのかもな。
「皆さん!再びこちらに集合してください!」
真壁さんが拡声器を使って皆に呼びかける。
この声に反応してモンスターが寄ってこないか少し心配したが、後々聞いてみたら1階層にいるスライムは耳という機能がないから音には反応しないという。
「おそらく皆さんレベルが上がったと思います。今日はこちらで以上になりますが、今後皆様は探索者としてダンジョンに入ると思います。命あっての探索者です!これだけお忘れのないように」
それだけ言って、真壁さんは拡声器を切った。
それからは、バスに乗って協会に戻ってきた。
「では皆さま、受付カウンターの方で探索者ライセンスをお渡しいたします。順番に並んで受け取りを済ませた方からお帰りになって結構です」
探索者ライセンス。
それは探索者の身分を証明すると共に、探索者のレベルを表すものだ。
今回の当選者の中には、探索者ライセンスが目的だった者もいるのではないだろうか。
なにせ探索者ライセンスは万能なのだ。
東京においては、交通機関含めすべての公共施設を無料で使うことができる。
また、東京探索者協会のレジャー施設、レストラン、トレーニングジムなども無料で使えるのだ。
さらには、上級探索者なれば税金の免除なども発生するという。
「お待たせいたしました。こちらが九条様の探索者ライセンスになります」
そう言って白色のカードを渡された。
そこには「KAITO KUJO」の名前と、顔写真、年齢、探索者ランキングが書き記してあった。
ちなみにライセンス取立てはランク5だ。
実績を立てていけば、表記される数字が段々と小さくなっていく。
日本より最初にこのシステムを取り入れたアメリカでは、既にランク1の探索者が二人誕生したという。
一体どれだけの化け物なのだろうか。
「簡単に説明させていただきますね。こちらのカードは、身分証兼銀行カードだと思っていただいて結構です。九条様は既に探索者協会の専用金庫に登録してあります。実績に応じて九条様の金庫へお金が振り込まれますので、デビットカードとしてもご利用いただけます」
しばらく受付でカードについての説明を聞いて、俺はその場を立ち去ろうとした。
出口へ向かっている途中のことだった。
「あの、もしかして九条カイトさんですかい?」
話しかけてきたのは、50代くらいの男性だった。
かなりラフな服装で、協会の関係者とは思えなかった。
探索者だろうか。
「あ、はい。そうですが…」
「やはりっ!何度か雑誌で拝見しました」
雑誌で?
あぁ、ゲーム雑誌かな。
一時期俺の作ったゲーム「ロード&マスター」は人気が高かったからな。
それでよく雑誌で取り上げられていた。
「もしかして『ロード&マスター』を?」
「えぇ、息子に勧められてプレイしてみたのが、いつの間にかハマってしまいました。あははは」
男性は、笑顔で興奮気味に話し出した。
「ロード&マスター」は若者をターゲットにして作ったから、こうして40、50代の人にも遊んでもらえているのが正直に嬉しく感じた。
「だが、九条さんが責任者から外されてからはほとんどプレイしていませんね」
「すみません。色々あったもので」
「頭突きですよね。有名な話です」
「あはは、そこまで知られていたとは…」
この人はちゃんと俺が、いや、俺たちが作っていた時代の「ロード&マスター」を好きでいてくれている。
それだけでもあのゲームを作って良かったと思えた。
「すみません、引き止めてしまって」
「いえいえ、お話できてよかったです」
「九条さんのキャラクターへの愛情は感動させられました。あのゲームを作っていただいてありがとうございます」
「…こちらこそ長い間遊んでいただきありがとうございました」
泣きそうになってしまった。
あのゲーム「ロード&マスター」は、俺が責任者から外されてすぐにサービス終了となった。
ゲームの方針が変わり、トップが適当に作らせたキャラクターをすぐゲームに登場させた。だが、キャラクターの個性がまったく感じれなく、プレイヤーからの激しいボイコットによりサービス終了が決定した。
そう言えばさっきのおじさんの名前聞いてないな。
まあ、探索者をしていたらまたどこかで会うだろう。
「とりあえず帰るか」
◆ ◆ ◆
世界はまだ知らなかった。
国が消滅するという本当の意味を。
【バチカン市国消滅まで———20日】
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