第5話 スライムと討伐


東京ダンジョン———1階層。



「皆さん、あれがスライムです」


「「「おぉぉ」」」


俺たちの目の前に現れたのは、半透明のモンスター「スライム」だ。


「スライムの攻撃パターンは主に2つ。タックルと胃液ショットです」


真壁さんが言うには、タックルはそれほど警戒しなくても良い。

警戒すべきは胃液ショットの方だと。

スライムが放出する胃液は、人間の肌を溶かせるほどの威力がある。



「それらさえ気をつけて、体の中心にある魔核を破壊したら討伐完了です。では、それぞれで討伐を初めてください」



そう言って真壁さんは参加者に自由行動を取らせた。

1階層に存在するモンスターはスライムだけだ。

スライムだけは、倒すのに魔核を壊す必要があった。

2階層以降からは、獲得した魔核の数に応じて報酬が支払われるのだという。



(よし、俺も狩っていくか)



俺は自分のステータスを確認する。



「ステータス…」



—————————


【名前】九条 カイト 

【レベル】 0/100


【H P】 30/30

【M P】 20/20

【攻撃力】 5

【防御力】 8


【スキル】 『オーヴァーロード』(Lv.0)


—————————



うむ、しかし改めて見てみると他の人に比べて少し弱いかもな。

さっき何人かに話しかけて皆どれくらいの数値か聞いてみた。

だが、俺が聞いたどの人も俺より数値が高かった気がする。



しばらく歩いていたら、目の前にひょこんとスライムが現れる。

最初はビックリしたが、すぐに戦闘態勢に入る。

探索者協会から借りたハンマーを握りしめ、スライムを観察した。



ぴょんっ



俺に向かって飛んできた。

しかし、そのスピードはとても遅く簡単に避けれた。



ぷるんっ



着地したスライムは、再び俺の方を向いてタックルする準備をする。

なんだろう。

なんか、少し可愛く感じてしまう…。

まあ、討伐するけど。

俺はつかさず右手のハンマーを振るった。



パリィン



簡単に魔核が破壊される。

本当にあっけない初討伐だった。

周りを見渡してみると、こんな弱いスライムに思いっきりスキルをぶつけていた者が多くいた。

基本的にスキルは、MPを消費する。

まあ、覚えたてのスキルを使いたい気持ちはわからなくもないが、実際の戦闘だったら命取りだな…。



「どうですか初めてのモンスター討伐は?」


「あ、真壁さん。ええ、なんと言うかあっけなかったです」


「あはは、そうでしょう。私も最初はそう思っていましたよ」



フレンドリーに真壁さんは話しかけてきた。

ちなみにこの人は何階層まで行ったんだろうか。

ふと気になって聞いてみた。



「真壁さんは何階層まで行ったんですか?」



すると、彼の表情が急に暗くなった。

なにか聞いてはいけないことを聞いたのだろうか。



「10階です......しかし、そこで多くの仲間が命を落としてしまいました」


「なんか、すみません」


「いえ、これも探索者だったら覚悟しなければいけない事実です。日本国を、家族を、未来を守るには戦うしかないのですよ」


「そうですね…」



そうですね。

そんな言葉しか返してあげられなかった。

この人たちは本気で日本を守ろうとしている。

なのに俺は遊び半分、好奇心だけでここに来た。

少し情けない気がする。



「じゃあ俺、もう少し討伐してきます!」


「はい!頑張ってください!」



俺はその場を去った。

日本を守る……か。

俺にそんなことできるとは思えなかった。

今はただ目の前のスライムを狩っていくだけだ。




【レベルが上がりました】




 ◆ ◆ ◆




薄暗い部屋の中。


部屋の中心には巨大な円卓が置かれていた。



「ついに動き出したな」


「クフフフフ。レベルアップが始まりました」


「おそらく最初に呼ばれるのはお前だ」


「えぇ。創造主にお会いできる日を待ち侘びていました」


「いいなぁ! 私も早く呼ばれないかな」


「順番が来るのを待つのじゃ」


「わかってるよぉー!」


「さあ、俺たちの主、いや創造主に会える日を楽しみに待とうじゃないか」

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