第3話 協会と講義


1週間後。



いよいよ今日だ。

俺は電車を乗り継ぎ、現在住んでいる神奈川県から東京の神楽坂に来ていた。

電車の中からでも見えた巨大な塔。

政府はあの巨大な党を「東京ダンジョン」と命名した。



ダンジョンが出現した際にそこにいた人は現在も行方不明だ。

自衛隊が必死にダンジョン内を探してみるも、未だ発見はできていない。



塔から徒歩約15分の場所に探索者協会の本部が建てられた。

探索者協会建設は国家規模の巨大プロジェクトとなり、その敷地面積は東京ドーム約5つ分。



敷地内には探索者が利用できる巨大なレジャー施設、レストラン街、宿泊施設、トレーニングジムなど様々な施設が建てられた。

これらは全て探索者用に作られたものだ。

それほどどこの国も探索者を優遇する。

なにせ国家を救えるのは、おそらく探索者だけなのだから。



「マジか…ニュースでは観たことあったけど本部ってこんなでかいんだ」



俺は現在、探索者協会本部の真下にいる。

見上げるとそこには一面ガラス張りの巨大ビル。

そのビルの中心には、国連が作った探索者協会のシンボルマーク、剣と剣が交差しているロゴが大きくあった。



協会の前では、今回の抽選に当選した人達が並んでいる。

やがて指定された時間になり、協会前に職員が現れた。

一人一人スマホを見せて、当選した際に送られたバーコードを職員に見せる。



ピッ



「ありがとうございます。九条カイト様、中へどうぞ」


「あ、はい」



指示された通りに建物の中へ入っていく。

自動ドアが開き、俺は協会の中に足を踏み入れた。



「………」



言葉が出なかった。

建物に入った瞬間、最初に目についたのは巨大な受付カウンターだ。

そこには数十名の従業員が待機していて、俺より先に入った人の受付をしていた。

天井を見上げると7階くらいまで吹き抜けとなっててとにかく広かった…。



(国はどんだけお金をかけたんだよ…)


「こんにちは、九条カイト様」


「あ、こんにちは」


「本日はご当選おめでとうございます。早速、本日の内容について説明させていただきます」


「お願いします!」



そこからは、受付嬢の説明が続いた。

今日行うのは探索者としての登録、基礎知識の講義、ダンジョンへの入場、そしてモンスターの討伐だ。

まさか今日中にモンスターの討伐まで行うとは思っていなかった。



「モンスターと言っても、1階層に生息しているスライムの討伐となるので、ほとんど危険はないと思って結構です」


「そ、そうですか…よかったです」


「では、説明は以上となりますので2階の大会議室へお願いします」


「わかりました。ありがとうございます」




 ◆ ◆ ◆




「皆さん、こんにちは」


「「「こんにちは」」」


「私は今日皆さんの基礎教育、ダンジョン入場を担当する真壁まかべじんと申します」



迷彩服を着たおそらく20代後半の男性だ。

俺とあまり歳は変わらないかも。

迷彩服ってことは、自衛隊の人かな…。

確か自衛隊だと隊員の30%はスキルを取得してるんだっけか。



「私は第2次探索の際にスキルを取得しました。【身体強化】というスキルです」


「「「おぉ」」」



皆がスキルを取得したという事実に反応していた。



「【身体強化】は、50人に1人の割合で取得する一般的なスキルです。スキルレベルにもよりますが、通常の身体能力の5〜20倍は出せると言われています」


「「「「おぉぉぉぉお」」」」


会場中が驚くを隠せないでいた。

それもそのはず。

この一年間、国や自衛隊はダンジョンやスキルに関する知識を公開していなかったからな。



そこからは、ダンジョンの基礎知識を叩き込まれた。

現在分かっているのは、

未だダンジョンが何階層になっているのかは不明であること。

また、自衛隊のスキル持ちが現在攻略できているのは、10階層までだということ。




日本には国の消滅まであと約131年の余裕があるが、将来のことを考えれば100年なんてすぐにやってくる。

世界でもっとも国土面積が小さいバチカン市国は、あと1ヶ月もたたないで消滅するだろうと言われている。

すでにバチカンは政府が国を手放しており、国民は近隣諸国に避難していた。




ダンジョンでモンスターを倒すと「魔核」という核がドロップする。

国の研究チームによると、魔核にはそのモンスターのDNA成分が含まれており、それを解析していくと魔核を武器として改良するのが最も適した使い方だと判明した。



「今私の腰にある刀も、魔核から作った武器です」



そう言って、真壁隊員は腰にあった刀を抜いて見せた。

刀の刃は光に反射して、青白く光り輝いていた。



「魔核から作られた武器は、モンスターを殺すのに最も有効です。ですので、ダンジョンでモンスターを倒した際はちゃんと魔核を回収しておいてください」



しばらく真壁隊員がダンジョンについて話した。

必死にメモを取る人もいれば、ただぼーっと聞いている人もいた。

そして、ダンジョンの説明は終わった。



「では、皆さんお待たせしました」



皆が待ってましたと言わんばかりに席から立ち上がる。



「これよりダンジョンに向かいます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る