第8話 親バカ

「笑留人…笑留人…笑留人…」

──────

────

──

                「エルピス!」


エルピス「うっ…」


気付くとわたしは自室のベットに寝かされていた。


エテレ「エルピス!わかる?」


エルピス「ママ…」


エテレ「ああ。良かった」


わたしの右手をギュッと握り母は安堵する。


よく見ると部屋の中には母の他に父、メイド達、それにクレイス先生がいる。

やっぱりわたしは怯えなくなったようだ。


人がすべて悪人な訳ではなく、中には俺のような人でも仲良く接してくれる人がいる。


クレイス「お嬢様…。お嬢様のおかげでわたしの命は助けられました。ありがとうございます!」


クレイスはわたしの意識が戻ったとわかるとすぐに母と代わり手を握りながら感謝の言葉を述べた。


エルピス「どこも痛くない?わたし…まだ魔法下手だから馬車も粉々にしちゃった」


弱々しくお詫びの気持ちを伝えるとクレイスはわたしの頭を撫でた。


クレイス「いいえ。お上手な魔法でしたよ」


そしてわたしは再び眠りについた。


──────────


エルピスが眠りについてしばらくのこと。


クラトラス家はクレイスを含めて家族会議をしていた。



イロアス「んで、エルピスの魔法のことについてだが」


クレイス「やはりあれは」


エテレ「そうね」


ピスティス「予想はしていましたが」


フィーリア「ん?」


フィーリア以外『この歳にしては強すぎる!』


戸惑うフィーリアをよそに皆は頭を抱えた。


エテレ「しかも光魔法よ」


イロアス「光魔法はかなり難しいものではなかったか?クレイス。教えたことは?」


クレイス「いや。教えてたのはウォーターボールだけよ。しかも魔法なんて撃ったこともなかったわ」


ピスティス「座学では教えたことはありますが」


沈黙の時が流れる


しばらくしてピスティスが口を開いた。


ピスティス「やっぱり…」


フィーリア「やっぱり?」


ピスティス「エルピス様は天才だったのよ!!」


フィーリア「えぇ!?」


エテレ「そうよね!」


イロアス「そうだな!流石私の娘だ!」


フィーリア「えっ?えっ?」


戸惑うフィーリアの肩にクレイスが手を置く。


クレイス「いつも大変ですね」


笑顔でこちらを見るクレイスを見てフィーリアは安心した。


フィーリア(あっ。久しぶりに見た正常者)


それからエルピスの光魔法事件は《エルピスが天才だった》ということで処理された。されてしまった。


──────────


次の日からは普通に魔法が撃てるようになっていた。


と言っても、あの時の光魔法ほどではないが。


エルピス「ウォーターボール!」


わたしがそう言うと杖先から1メートルほどに小さな水玉ができた。


クレイス「お上手です。お嬢様!」


エルピス「えへへ。ありがとう」


わたしが気を抜くと水玉は重力負荷がかかり地面に落ちた。


クレイスとも対面で授業が受けられるようになったし、これから沢山の魔法を学びたくてワクワクが止まらない。

しかし、あれから光魔法だけは使うなと言われた。どうしてだろう。




つづく


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