第6話 魔法

時は流れ、わたしエルピス・クラトラスは7歳になった。


ここ最近はピスティスに勉強を教えてもらっている。


ピスティス「それではお嬢様ここの答えは?」


エルピス「53です」


ピスティス「正解です!やっぱりお嬢様天才!」


今は計算の授業中。流石に人生二周目なのでスラスラと問題を解いていける。

だが勉強を無双できている訳では無い。前世では習わない異世界ならではのことはわからない。

例えば歴史、魔法学などがさっぱりだ。

魔法学においてはとても興味があるので好んでやれるが、歴史においては前世でもニガテというのもあって全然覚えられない。


イロアス「エルピスー」


一階から父の呼ぶ声がした。


ピスティス「じゃあ、一旦休憩にしましょう」


ピスティスが手を合わせそう言い、二人して階段を降りた。


エルピス「なにパパ」


下に行くとイロアスが玄関のドアノブを持ちながらわたし達を待っていた。


イロアス「エルピス。お前に試練だ」


そう言うとイロアスは玄関を開ける。そして、ドアを開いた先には知らない人の影があった。


ゾゾゾ


エルピス「きゃあ!」


わたしは反射的にその場にしゃがみ込んでしまった。


4歳の頃から治らないこの現象。別に怯える必要もないのにどうしてか怯えてしまう。


イロアス「やっぱりだめか…。ごめんなクレイス」


クレイス「いやいや。大丈夫よ」


イロアスは一旦クレイスを外に出すとわたしの目の前にしゃがんだ。


イロアス「今日からエルピスの魔法の講師になるクレイスさんだ」


父がそう言うとドアの外から女性の声がした。


クレイス「お嬢様。これからお世話になります。クレイス・オディアと申します」


どうやら父はわたしに魔法を教えようと、講師を雇ったらしい。


クレイス「お嬢様といっしょに魔法の練習ができること楽しみにしています」


こんな反応をして申し訳ないことをしたと謝ろうとしたが、クレイスがその場を去る足音がした。


イロアス「少しずつでいいから慣れていこうな」


そう言うと父はまだクレイスと話すことがあるようで、外へ出てた。


その様子をしばらく見ていると、背中から何やらすごいオーラが出ているのに気付いた。

後ろを振り向くとオーラの正体がすぐにわかった。

ピスティスだ。

明らかにライバル視する目で玄関を見ている。

わたしがクレイスに取られると思っているようだ。


ピスティス「お嬢様。そろそろ勉強の続きをしに行きましょうか」


エルピス「う…うん…」


────

──


あれからというものクレイスはほぼ毎日家にきて、わたしが怯えると帰るというのを繰り返している。


そんなある日クレイスはある案をわたしに扉越しに提案してきた。


クレイス「お嬢様。これでは進展が見受けられません。ですので提案なのですが、壁越しにわたしの声のみで魔法の授業を受けるのはどうでしょう」


確かにクレイスの言う通り、わたしは対面さえしなければこのように会話ができる。だが、わたしを見ないでどうやって魔法の出来具合を見るのだろう。

しかし、疑問を問おうとした前に解決した。


クレイス「わたしは偵察魔法でエルピス様を見るので、わたしの指示に従って動いてください」


【偵察魔法】離れた場所、障害物で見えない場所でも魔力の流れを利用し見ることができる魔法だ。

どこまでも見れる訳ではなく遠くになるもしくは障害物の大きさによって見えなくなっていく。


エルピス「わかりました」


クレイス「では、魔法神に許可をもらいに行きましょう」


そういえば前に魔法の本に書いてあった。魔法を使うためには魔法神に許可を貰わないといけないと。


エルピス(魔法神に許可をもらうってなにをすればいいんだ?)


クレイス「エルピス様。この魔法陣に血を貰えませんか?」


そう言うとドアの下から魔法陣が描かれた神がわたしに渡された。

わたしはそれを拾い、近くにあった果物ナイフで中指に傷をつけた。

出てきた血を魔法陣に垂らす。すると…


パァァァ


と効果音がついていそうなくらいの強い光が僕を包んだ。


光に包まれたのは一瞬で、目を開けるとそこには燃え散った紙があった。


クレイス「魔法神の許可完了です」


────

──


それからわたしはクレイス先生の指導の元、魔法の授業を週に1回受けることになった。


クレイス「エルピス様。もうちょっと杖先に意識を込めて下さい」


わたしの人見知り対策として間仕切りを挟んでクレイス先生から指示がとぶ。


エルピス「わかりました。ウォーターボール!!」


わたしはクレイス先生の言う通りに杖先に意識を込め魔法を出そうと目の前に杖を差し出す。


・・・


しかし、わたしの杖からは何も出ていない。


クレイス「お嬢様!もっと強く!」


エルピス(いや、かなり意識したけど!?)



こんな感じでかれこれ5時間。もう日が暮れそうだ。


どうもコツが掴めない様で全く魔法が使えない。


クレイス「日が落ちてきましたし、これで終わりにしましょう」


そして、クレイス先生は間仕切りを持ちわたしに見えないようにちょこちょこと横歩きで家の中へ入っていった。


────

──


クレイス「ではお嬢様。また来週」


玄関でドア越しにクレイス先生にまたねと言う。

クレイスはここから近い街【アルヒ】に住んでいるらしく、普段はギルド活動をしているらしい。


エルピス(いいなぁ。ギルド活動。ザ・異世界って感じじゃん)


そう思いながらわたしはクレイス先生を遠くから見送ろうと二階の自室に向う。


バッ


窓を開けると遠くにクレイス先生の乗った馬車が見える。

見えているか分からないがわたしは大きく手を振った。

その時だった。


エテレ「キャーーーーー!!」


なんと馬車に3匹のフォレストウルフが襲いかかったのだ。


エルピス「クレイス先生!!」


このままだとクレイス先生が危ない。

だが、馬車はかなり遠くにあり走って着いた頃にはもう間に合わない。ましてや今のわたしでは無力だ。


エルピス(そうだ!魔法なら!)


わたしは咄嗟にポケットにある魔法杖を取り、フォレストウルフの方向へ向けた。


エルピス(ええっと。ウォーターボールじゃ威力が足りないから…)


魔法が使えたことはないけど、クレイス先生を助ける為にはこれしかない。わたしは必死に攻撃になる魔法を考える。


エルピス(あっ。これなら!)



『ライトスピアー!!』





つづく


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