第4話 なやみごと

エルピス「んーっ」


わたしはとても悩んでいた。


エルピス(この世界に利益か…)


クリエルから言われた条件。転生者は特別な存在でなければならない。転生者はその世界に利益を出すこと。

わたしはそれを達成するために何をやるべきかここ最近ずっと考えていた。


エテレ「エルピス!ご飯よ!」


エルピス(おっと。朝食の時間だ。はやく下に降りないと)


わたしは急いで階段を降りる。


イロアス「エルピス。おはよう」


エルピス「おはよう。パパ」


エテレ「エルピス顔は洗った?」


エルピス「うん!」


イロアス「今日も元気だな」


父がわたしの頭を撫でながら言う



エテレ「aqras medias」


『いただきます』


エルピス(今日も母のご飯は美味しいなぁ。にしても、どうしよう。利益になるもの…利益になるもの…利益に…)


ピスティス「エルピスお嬢様。なにかお悩みごとでも?」


(そうだ)

エルピス「あー。あのね。今この世界で一番問題になってることってなにかなーって」


イロアス「そうだなぁ。やっぱり国交かな?」


エルピス(やっぱ。どこの世界も国交だよな)


イロアス「ところでなんでそんな事を?」


エルピス「いや。別に…」


全員が顔をかしげた。


エルピス「何でもないよ。本当に。」


エテレ「なるほど。最近歴史の本を読み始めたから気になったのね。なんて良い娘なの」

ヨシヨシ


エルピス(たぶん。家族に世界を冒険したいなんて言い出したら泣き叫ぶだろうなぁ…)


そんなことを考えながら、時は早いもので半年近く経っていた。


~~~


わたしが倒れたから母はあまり遠くに行かせてくれない。それに激しい運動も禁止された。心臓が悪いと聞いて、心配なのだろう。まぁ、その分本を読むのに集中できるが。


そうそう本のことで気になったことが一つ、ここ風の国アウラーは王政らしいが、国王のことが一切書かれていなかった。歴史についての本は数冊しかないし、絶対におかしい。


エルピス「ピルティス〜」


わたしは冬用の服を編んでいたピルティスを呼んだ。


ピルティス「何でしょうかお嬢様」


ピルティスはすぐに作業をやめて、こちらに来てくれた。


エルピス「この国って王政でしょ」


ピルティス「はい。そうですお嬢様」


エルピス「じゃあ、王様ってどんな人なの?」


ピルティス「あ…」


突然ピルティスの表情が固まった。


明らかに動揺している。これは絶対何かを隠している感じだ。


すると台所から母が顔を出してピルティスを助けるように回答した。


エテレ「王様はね、あまり顔を出さない人なのよ」


エルピス「だとしても歴史の本には一切王様のことが書かれていないのはおかしくない?」


エテレ「あ…」


わたしの返しに母も固まった。


イロアス「王家のことをかくと、色々問題になるからな。間違ったこと書いてたら大変だろう」


エルピス「なるほど…」


納得したことにしておいたが、この三人の反応から何かを隠してるのは確実になりつつある。


セラピア「王様の話ですか?王様はですね~」


エテ・イロ・ピル『ちょっ!!』


三人は同時にセラピアの口をふさいだ。


セラピア「んっんんーんー」


セラピアはピルティスに連れられ台所に戻される。


イロアス「とっ。とりあえず。王家のことは慎重に扱わないといけないんだ」


エルピス「わかった」(ちぇっ。セラピア単独に聴けばよかった)


━━━━━

━━━


それから、わたしは仕方なく身の回りのことを観察することにした。


まず、日常的に使っている魔法からだ。


台所で料理をするとき、母は手から火を出し薪に着火している。

そして、エテレとピルティスは魔法の杖らしきものを使って詠唱をし、そこから火を出し薪に着火する。


ってことは母は魔法杖を使わず、詠唱もなしに魔法を使う。つまり、上級魔法師だ。

エテレとピルティスは魔法杖を使って詠唱する。初級魔法師だ。

魔法を使うには魔法神の許可が必要らしいが、いつ許可をもらえるのだろう。そもそもどうやって貰うんだ?

このことは後に聞くとして、次にお風呂だ。


お風呂があるのは有り難い。どうやら魔法装置というもので湯を沸かしているらしい。四角い箱状石に魔法陣が描かれている。ここに水が入り、ある程度の温度になると水が排出される。いわゆる給湯器だ。


この魔法陣を使えばわざわざ火を着けずに料理できるのでは?と思ったが、そう簡単にいかないのだろう。


その他にも多くのものに魔法陣が使われている。

この世界は機械の代わりに魔法陣が使われているようだ。

魔法陣の技術が上がれば、わたしの前世に暮らしていた街くらいに発展するだろう。

この世界は魔法に溢れている。


そんなことをベットで考えていると、私はいつの間にか寝てしまっていた。


━━━━

━━


エルピスが寝た後…家族会議が始まっていた。


イロアス「で、エルピスがついに気付き始めた訳だが」


エテレ「思ったよりも気付くのが早かったわね」


イロアス、エテレは頭を抱えていた。


ピルティス「流石エルピス様ですね…」


セラピア「昔から頭がいいと思ってました!」


メイドの二人は何故か嬉しそうにしている。


エテレ「それはそれで嬉しいんだけど…」


家族会議はオルネー(月が一番高い位置に登ると鳴く鳥)が鳴くまで続いた。




つづく


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