第2話 新しい家族

時は過ぎて転生から5年


「エルピスご飯よ〜」


「はーい」


ダッダッ


「エルピス。おはよう」


「おはよう。パパ」


俺。いや、わたしはエルピス クラトラス 5歳。転生者だ。


「エルピス。顔は洗った?」


「うん!」


この高身長の女性エルフはわたしの母親 エテレ クラトラス。


「今日も元気だな」


このがたいのいい男性エルフはわたしの父親イロアス クラトラス。


エルフ好きのわたしは前世の地球からエルフのいるこの異世界へ転生してきたのだが、どうやら自分自身がそのエルフらしい。しかも性別が女性ときた。確かに女性エルフが大好きだったけど…



なりたい訳ではないぞ!!



ちゃんとクリエルに伝えとくべきだったと大後悔するのであった。


そんなわたしは今日も前世の記憶を隠してこの家で暮らしている。(←なんとなく)

森の中にある大草原の真ん中にポツンとあるまぁまぁ立派な家だ。


家族は3人。それとふたりのメイド。

にしてもこの人数にメイドふたりは多いよな。

いや、この世界では当たり前なのかもしれない。


「さて、みんなそろったわね」


エテレ(母)はみんなが揃うのを確認すると、緑のロウソクに火をつける。


「aqras medias」


エテレがそういうと、ロウソクの火は赤から緑、青そして赤に一瞬で変わった。


いつみても不思議だ。


「では、いただきます」


『いただきます』


母のつくる料理はいつも美味しい。

料理上手の美人の心を射止めるなんて、父もだいぶやるじゃねぇか。

そんな父が口の中に沢山のパンを入れながら私に話しかけてきた。


「エルピス。今日は何をするんだ?」


「今日は南の野原で遊ぼうと思ってるの」


「南か、わかった」


父イロアスは毎日わたしが遊ぶ場所を聞いてくる。それというもの、4歳になりたての頃父を訪ねてきた訪問者にわたしはとても怯えてしまったため、父はあまりわたしと外の人が接触しないようにしてくれている。

なぜ、わたしが外の人に怯えてたのかは自分でもよく分からない。

ただ、本能のように体が勝手に反応した。


「お嬢様。今回もわたしが付いていきますね」


この子はメイドのピスティス。わたしの専属のメイドみたいだ。


「いいなぁー。私もお嬢様と一緒に遊びたいなー」


そしてこの子はいつも母の手伝いをしているメイドのフィーリア。


「フィーリアは今日もわたしの手伝いよ」


「えー」


このメイド達は私達クラトラス家と結構仲が良い。


━━━


チュンチチチチ


朝食を食べ終わり、わたしは南の野原に居た。


チッロロ


前世では全く聞き覚えのない鳥の鳴き声。


ピスティス「お嬢様は本が本当にお好きですね」


わたしはいつも外に遊びに行くと本を読む。


ピスティス「にしても、難しい本をお読みになりますよね」


彼女が言う通りに確かにこれは難しい本だ。

そう、これは…魔法の本!


(いやぁー。にしても魔法があってよかった。エルフだけいてもつまらないもんね。魔法とエルフはセットじゃないと)


ピスティス(にしてもこの子すごいわね。文字を覚え始めたと思えば、あっという間に習得してるんだもの。さては、この子天才!まぁー知ってたけどーエルピスお嬢様が天才なんてー。こんなかわいらしいわたしのお嬢様が低能なんてはずありませんものー)


エルピス(なんか後ろからやべーやつのオーラが…)ビック


気を取り直して。どうやらこの世界では、魔法は水、炎、風、岩、雷、氷の6つがあるらしい。個人個人に適正があるらしいけど、適正以外の魔法が全く使えない訳でもないらしい。

そして、魔法使いにはランクがあり初級、中級、上級、神級がある。

初級は魔法杖がないと魔法が撃てないレベル。

中級は魔法杖がなくても魔法が撃てる。

上級が詠唱がなくても魔法が撃てる。

神級が神級魔法という魔法が撃てる。


魔法自体のレベルはたとえ高度魔法でも、魔法杖と詠唱が良ければ射てるらしい。


それと、魔法はどうやら魔法神とやらに許可をもらわないといくら頑張っても射てないらしい。


(はやく魔法神に許可もらって魔法射ちてー)


ピスティス(にしてもお嬢様、本だけ読んで大丈夫かしら。普通だったらこの年の頃は元気に走り回ってる時期だけど…言ってみるか)


ピスティス「お嬢様」


エルピス「ん?なに?」


ピスティス「せっかくのお外なのに動いて遊んだりしないのですか?」


エルピス「あーそれね」


(確かに普通だったら動き回ってあそんでるよね。心配かけないようにするか)


エルピス「じゃあ、何して遊ぶ?」


ピスティス(お嬢様が動き回って遊びたいと!)ううっ


エルピス(なんで泣いてんだ。この人)


ピスティス「お嬢様!ゴブリンごっこしましょう!」


エルピス「ゴブリンごっこ?」


ピスティス「わたしはゴブリン役になるのでお嬢様は逃げてください。そしてわたしがお嬢様に触れたら次はお嬢様がゴブリン役になってわたしを追いかけてください」


エルピス(あー。鬼ごっこね)「いいよ」


ピスティス「では!いきますよー」


エルピス「にげろー」


久しぶりにやった鬼ごっこはかなり楽しかった。子供の身体だからだろうか、無限に体力があるように感じられた。


気がつくと日は傾き夕暮れになっていた。


エテレ「お帰りなさい」


エルピス「はぁっ。はぁっ。はぁっ。」

(バカ疲れたんだが…体力は無限やなかった…)


ピスティス「お嬢様遅いですよ」(お嬢様を追いかけるのも。必死に追いかけるお嬢様も可愛かったなー)


━━━


ジャーー


結構文明が発展してなさそうなこの世界にはなぜかシャワーがある。そして湯船も。


(ふぅ。久しぶりに疲れたな肉体的に)


わたしは野原で転げ回ったり、汗をかいたりしたので早めのお風呂に入っていた。


「m··i···w」


わたしは母の声が気になりシャワーを止めた。


ピスティス「そうなんです。あのお嬢様がわたしとゴブリンごっこを」


エテレ「あんなに動かない子なのに」


イロアス「はっ。はっ。元気でいいじゃないか」


フィーリア「えーズルいですピスティスだけ。私もお嬢様とゴブリンごっこしたかったー」


なにやらわたしが珍しく体を思いっきり動かしたことで騒いでるらしい。


ジャーー


何事もないとわかりシャワーをもう一度出す。


━━━━


夕食も終わりわたしは母エテレに寝かしつけられていた。


エテレ「エルピス。今日は珍しく体を思いっきり動かしたようね」


エルピス「うん」


エテレ「楽しかった?」


エルピス「疲れたかな…でも楽しかった」


久しぶりにあんなに動いた。前世で最後に鬼ごっこやったのいつだっけ…


わたしはそのまま眠りについた。


━━━━━

━━━


エルピス「ぐふっ!!」


突然めが覚めると胸に刺されたような痛みを感じた。


ドッタン


わたしはあまりにもの苦痛にベッドから転げ落ちた。


エルピス「うっ。ぐふっ。」


ドタドタドタ


朝が早い母達が音に気付き一階から上がってくるのが音でわかった。


エテレ「エルピス!」


イロアス「エルピス!」


ピスティス「エルピス様!」


フィーリア「エルピス様!」


みんなの声がだんだん小さくなっていく。


まって。まだ5年だよ。はやくない?まだやりたいこと沢山ありすぎるんだけど…




つづく


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

いつもお読みいただきありがとうございます。モチベーション向上のため『いいね♥』や『フォロー』おねがいします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る