九通目 まるで夫婦のようだ②

「どうかしら……?」


 不安そうな表情で、里美さんが俺の顔を覗き込む。


「めちゃくちゃうまいですっ!」

「そう、よかった」


 彼女は見た目通りに料理ができるらしい。

味噌汁や焼き魚などと言った和食はなんだかとても夫婦感がある。そんなことを勝手に妄想するのは失礼かもしれないが……。俺は箸を次々と進めた。


「やっぱり、食べてくれる人が居るのはいいわね」

「そうなんですか?」


 もぐもぐと頬張る俺を見つめて微笑む。


「康太くんみたいにおいしそうに食べてくれる人、好きよ」

「え、えぇっ!?」


 突然発せられた『好き』という言葉に過剰に反応してしまい、食べていたものを喉に詰まらせてしまった。


「ゆっくり食べてね」


 渡されたお茶を流し込み、ひと息つく。


「里美さんこそ、美人だし、料理もできるなんていいお嫁さんになりますよ!」

「お、お嫁さんっ!?」


 その言葉を聞いた彼女は両手を頬に当てて俺から目を逸らし、何かをボソボソと呟き始めた。


「お嫁さんってやっぱり、私誘われてるのかしら。いや、でもそんなことあるわけないだろうし、自惚れちゃダメよね。でも、でも——!」

「どうかしました?」

「……康太くんは、私をお嫁さんにしたい?」

「いやぁ、俺なんかには無理ですよ〜。つり合わないって言うか、手に負えないというか」


 この人には、俺よりももっといい男がいるはずだしな。


「ふーん、そうなのね。特別にデザートにプリンをあげようと思っていたけれど、康太くんにはあげないわ」

「えっ、どうしてですか!?」

「どうしてもよ」

「嘘だろー!?」


 くっ、乙女心とは難解なものだ……。

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