番外編 もうお嫁に行けない

「はぁぁぁぁぁ」


 人生の全ての幸せが飛んでいってしまうんじゃないかと思ってしまうほどのため息をついて、机の上に突っ伏す。


「最近、私どうしちゃったのかしら……」


 初めて、配達のお兄さんに趣味がバレたとき、引かれると思ったのに、受け入れてくれたのが嬉しくて……。

それでつい舞い上がっちゃって、あんな姿まで見せちゃうなんてなー。

しかも裸まで見られるし……。

思い出しただけで少しうずうずしてしまう。


「もうお嫁にいけない……。責任とってよね〜」


 最近、どんなときでもあの子のことで頭がいっぱいになってしまっている。

あの子で何回かシちゃったこともあるし……。

本当は私のことをどう思っているのだろうか。

ときどきそんなことも考えてしまう。

——彼女とか、いるのかなぁ。


「そもそも私のこと何歳だと思ってるのかしら……。お姉さん、お姉さんって呼んでくるし……。あっ、もしかして名前知られてないの!?伝票に書いてるのに!?最近、わざと荷物を一つずつ日付をずらして頼んでるのに!?」


 ガバッと起き上がり、ふと、我にかえる。


「どうしてこんなこと考えてるんだろ——」


 部屋に聞こえてくる蝉の鳴き声が、虚しく響く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る