四通目 ズレた羞恥心を持っている
「あの人、今日も何か届いてるなー」
伝票に書かれた住所と部屋の番号は、もう見慣れたものになってしまった。
いつもと同じルートを使い、いつもと同じ景色を通り過ぎながら部屋へ向かう。
「お届け物でーす」
一度インターホンを押して、ほんの少し待ったが、反応がなかった。
「今日は留守なのかな…?」
そう思って、もう一度インターホンを鳴らそうとした矢先に、中からバタバタと足音が聞こえてきた。その音はやがてこちらに近づいてきて、扉の鍵を開ける。
「ごめんなさいっ!お風呂入ってたから…!」
「——ですよね。見たら分かります」
「えっ……!?」
今更、自分の格好に気がついたのだろうか、彼女は自分の姿を再確認して顔を赤らめた。
よっぽど急いでいたのだろう。
お姉さんは、体にバスタオルを巻いただけの状態で部屋を出てきていたのだ。
髪も少し濡れていて、水滴が体をなぞって下へ、下へと落ちていく。
でも昨日の下着よりかは布の面積が全然大きいから安心だな…!
どちらかというと、こっちのほうが断然まともに見える!
そして、上から下へと視線を動かし、バスタオルからスラリと伸びる脚へたどり着いたときだった。
「ちょ、ちょっと……」
「はい?」
「見過ぎ…じゃない……?そんなに見られたら、恥ずかしい、かも…」
「えっ?」
目をそらしながら、真っ赤に頬を染めた彼女から発されたその言葉に俺は衝撃を受けた。
確かに、風呂上りで、しかもバスタオル一枚を体に纏っただけの状態をまじまじと見つめられるのは恥ずかしいというのは当然のことだ。
でも、一つだけ言いたいことがあるんだ。
——昨日のアレは恥ずかしくなかったのか!?
「荷物、いつもありがとうね……」
「い、いや!これくらいお安い御用っすよ!」
そうやって荷物を渡して快く戻るつもりだったのだが……。はらりと一枚の純白の花弁が目の前で散ってゆく……。荷物を受け取ろうと、両手を伸ばすと同時にバスタオルが解けて落ちていった。
きめ細かい白い肌に柔らかな曲線。
大きな山を登った先にある薄桃色の小さな山頂。そしてその下には——。
「あっ……」
ばっちりと目が合う。
「いつまで見てるつもりなの……っ!変態ッ!!」
「すみませんでしたぁぁ!!」
母親にも
人生で初めて女性からくらった平手打ちは、俺の右の頬に手形となって深く刻みこまれた。
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