五通目 それは隠しておいてほしかった

「よっと、今日の荷物はちょっと重たいな……」


 引っ越してきたばかりだと言うお姉さんの部屋に荷物を運ぶというのは、俺の日常の一部にもなってきた。それに、この仕事にも慣れてきて、筋肉もついてきた気がする。

 お兄さんったら意外と筋肉質なのね……。

抱かれたくなっちゃうわ……。

なんて!そんなこと起こるはずないのはちゃんと分かってますよ!

 伸びた鼻の下を戻して、インターホンを押す。


「はーい」

「お姉さん、宅配です」

「いつもありがとう」


 部屋から出てくるお姉さんの姿は相変わらず無防備で、胸元とか、太ももとかに目がいってしまう。


「その荷物ちょっと重いでしょ?申し訳ないんだけれども中まで運んでくれないかしら?」

「全然おーけーですよ!女の人にこんな重いもの持たせるのは危ないですもんね!」

「あら、男らしいこと言うじゃない。惚れちゃうところだったわ」

「ちょっ、急になに言ってくるんですか!!」

「ふふ、可愛い反応するじゃない。それじゃあ彼女とかいないでしょ?」


 優しい顔して痛いところを突いてくる。

なんでこの人はこんなにも嬉しそうなんだろうか。


「べ、べつにいいじゃないですか……。そういう相手は焦って見つけるもんじゃないですよ」

「そうね。それじゃあ、その荷物はそこの棚の上に置いてくれるかしら?」

「分かりましたっ」


 お姉さんの指した指の先にある大きめの木の棚の上に荷物を置き、ひと息ついた。

すると、荷物を置いたときの振動のせいか、棚の中から何かが転げ落ちた。


「あっ、すみません。何か落としちゃったみたいで!」

「いいのよ、大したものは入れていないから」

「そうですか」


 お姉さんの言葉に安堵し、屈んで拾おうとしたが、それの異様な雰囲気にぴたりと手を止めてしまった。小刻みに振動し、ウネウネと動作しているピンク色の棒状のもの。


——いや、大したもの入ってたーッ!!


 これは拾っていいのか?

というか、男の俺が触っていいものなのか?


「お姉さん、これって…」

「アー、ソレネー、オソウジヲスルトキニ、ツカウノヨー」


 いや、嘘つくのが下手すぎる!

顔を背けてガタガタと震えているお姉さんの姿にギャップを感じてしまう。しかし、このままではいけないと思い、俺はそれを拾い上げた。


「あっ、そうですよねー。俺のおふくろもよく使ってた気がしますー。あははは」


 スマン、おふくろ!!

 実家に帰ったらたくさん肩を揉んでやろう。

そう強く心に誓った。

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