2話 大自然の中

「着いたー!」

「そうだね~」


 私、平柳ひらやなぎつばめは、彼氏である三瓶さんぺい挑夢のぞむ君と旅行に出掛けた。

 1泊2日の旅行である。

 2人でどこかに宿泊込みで出掛けたのは初めてのこと。

 とてもワクワクドキドキしている。


「ふれあい体験とか出来るけど、もうなんか、散策だけで満足しそう」

「こんなに広い大自然ならね」


 ここは国内最大の農場。

 大自然を見たり、また牛や羊を眺めたりと、それだけで癒される。

 体験だと、動物とのふれあいが出来て、牛乳でバターを作る体験もある。

 レストランやお土産屋さんも充実している為、ここにずっといるのもありである。


「とりあえず散策しますか」

「だね~」


 さっそく歩いて散策をすることにした。



 歩いて散策した時、1本の桜の木を遠くから見た。


「春に、また行くのはどう?」


 優しい声音で挑夢君は言った。


「春?」


 私は聞き返した。


「きっと綺麗だよ~」

「だよね」


 また1つ、2人の楽しみが増えた。


 ミニチュアホースとのふれあい、牛乳からバターを作って、お土産屋さんでたくさん買って、レストランで美味しいご飯を食べて。

 たくさんの思い出を胸に閉まって、今はホテルにいた。



「楽しかったー!」

「良かった良かった~♪」


 ベッドに私は寝転がる。

 挑夢君は隣のベッドに座っていた。


「先にお風呂良い?」

「どうぞ~」


 私は部屋に付いているお風呂に先に入ることにした。

 なんだか念には念をという感じで、丁寧に洗った。

 湯船に浸かり、少し考える。

 どうなるのかなー…。

 なんにもないかもしれない、起こるかもしれない。

 私はどちらに転んでも良いと思っている。

 起これば覚悟はするし、なんにもなければせめて同じベッドで寝たい。

 のぼせない所で私は上がった。

 寝る時の服装は、Tシャツに短パンなのだが、今回は可愛い水玉模様のあるパジャマにした。


「上がったよー!」

「は~い、じゃあ行ってくるね~」


 挑夢君はお風呂に行った。

 彼がお風呂に行っている間に、私は持ってきたドライヤーで髪を乾かした。



「いや~、気持ち良いね~♪」

「それは良かった!」


 やってみたかったことの1つである、彼氏の髪を乾かすこと。

 挑夢君は気持ち良さそうにしている。


「おーわり!」

「ありがとう♪」


 髪質は柔らかかったから、触っていて羨ましいと思った。

 私の髪はさらさらしていても、かたい感じがして、潤い足りないのかなと悩んでいる。


「なんのシャンプー使ってるの?触り心地良かったから」

「あはは」


 なんて話をしながら、ゆっくりと寛ぐ。

 1時間は話し込んでいると、眠気が少しずつ襲ってきた。


「そろそろ寝ようか?」

「う~ん」


 なんにもない、なさそうだ。

 眠くて、でも、お願いを言いたくて。

 うとうとする私は、挑夢君にもたれかかった。


「つばめ、大丈夫?」

「挑夢く~ん…」


 高校卒業後から私のことを呼び捨てするようになった挑夢君。

 最初は驚いたけど、今は慣れて平気に。


「一緒に…いっ、しょ、に…」

「一緒に?」


 頑張れ私と、眠気に打ち勝つように、最後の力を振り絞る。


「一緒に…同じ、ベッド、がーいい…」


 言ってしまったあああー!

 と恥ずかしい気持ちになってはいるが、もう眠気の限界はきていた。


「いいよ、このまま、おやすみにしよっか~」


 そう言って、挑夢君は私をゆっくりと寝かしてくれた。

 そして電気を消して。


「寒くない?暑いかな?」

「だ、大丈夫…でしー…」

「よしよし」


 挑夢君の優しい声と、頭を撫でてくれたおかげで、私は静かに眠った。


「おやすみなさい、つばめ」


 次の日起きた時、隣に彼が寝ていて驚いた。

 同じベッドで寝たことを思い出し、ドキドキしてしまった。

 寝顔が可愛いと思って、頬をつんつんしたのは秘密。



 同じベッドで寝たいと聞いて、大丈夫かなつばめはと心配した。

 僕だって男子だ。

 何か起こるかもとか思わなかったのか。

 でも、信頼されている証と思えば良いのだろう。

 交際中は手を出すことはしないと決めてはいるが、もう少しガードしてほしいかなと思う。

 なにはともあれ、彼女の可愛い寝顔、パジャマ姿に、ドキドキして眼福だな~と思ったのはここだけの話。

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