12話 甘い香りが漂う女子会

「さて!始めるよー!」

「「おぉー!!」」


 私とさとは、つばめの家にいた。

 3人それぞれ持ってきた物をテーブルに置いて、エプロンと三角巾を着けて準備万端。


「では、第1回バレンタインチョコ会議を始めまーす!」


 つばめは高らかに宣言。


「会議じゃなくて、手作りでしょ!」


 私がすかさず突っ込んだ。


「はいはい、んで何を作んの?」


 里が冷静にまとめる。


「私はチョコを溶かして、牛乳を混ぜて、型に流して冷やし固める!」

「凝ったのにしないの?」

「ド定番が良いんだよん♪」


 つばめの考えは予測不能だ。


「里は?」

「私はトリュフだよ」

「へぇー!」


 チョコトリュフかぁ。思い付かなかった。


みやびは?」

「私はチョコレートクッキーにする」


 いろいろ調べたけど、日保ちするクッキーにした。


「じゃあ始めようか」

「「はーい!!」」


 3人それぞれ手作りチョコ作りを始めた。


 作りながらたまに話して作業をしていた。

 私はなんとなく気になったことを聞いてみることにした。


「里?」

「なに?」

「里って…磯辺いそべ君のこと、どう思ってるの?」

「ふぇっ!?」


 持っていたゴムベラを落とした里は、急いで拾って流しに置き、慌てて水道でキッチンペーパーを1枚を軽く濡らし、それを床についてしまったチョコを拭き取り、キッチンペーパーはゴミ箱へ。

 次にゴムベラを洗った。

 几帳面だからか、彼女の身体は自然とアクシデントに対応していた。

 それでも分かるくらいに、物凄く動揺している。

 顔なんて真っ赤っか。


「ど、どうしたの急に!?」

「いや…だって気になって」

「私も聞いてみたかったー!」


 どさくさに紛れてつばめも反応する。

 全く調子良いんだから。


「2人共、分かってたの?」


 おそるおそる里は私とつばめに聞いた。


「分かりやすかったよね」

「あれ分かんないなんて、さすがだよ磯辺君」


 そう、彼はのだから。


「いつから?」

「それはー…その…」


 恥ずかしそうに里はこう言った。


「去年なんだけどね」


 里と磯辺君は去年から同じクラスで、よく目立つ彼を見て、最初はチャラい感じと捉えていた。

 でも、文化祭準備期間では誰よりも作業を率先してやり、時に指示を出してまとめていたそうだ。

 里はその様子を遠くから見ていて、しっかりしていて、凄く働くじゃない、と尊敬の念が芽生えた。

 もちろん普段の彼は、クラスのムードメーカーで目立ちたがりで、可愛い女子を見ると鼻の下を伸ばしている、普通の男子であるが、話すと楽しくなっちゃう不思議。

 いつの間にか気になる存在となっていたそうだ。


「そうだったんだ」

「2年になっても同じクラスだから、嬉しくて嬉しくて」

「良いね~♪」

「雅とつばめのおかげで、話すようにもなったし、ありがとう!」


 里の可愛い一面が見れて、私は嬉しくなる。

 つばめも「このチョコがきっかけになりますようにー!」と、作っている菓子に向かって言った。


「私もチョコに念じとこ!」

「だね!」


 3人それぞれ手作り 菓子チョコに愛情を込めるのだった。


「「「出来たー!!!」」」


 三者三様の手作りチョコが完成した。

 早速、試食会が始まった。

 まずは、つばめのチョコレート。

 ミルクの甘味がチョコを優しくしていて美味しかった。

 混ぜて型に流して冷やし固めただけなのに。

 次に里の作ったトリュフチョコ。

 ほんのりビターがアクセントになっていて、大人の味って感じだ。

 中の甘いチョコをより引き立たせていて美味しい。

 最後は私のクッキー。

 生地にカカオのパーセンテージが高いチョコを混ぜて、型を取り、甘いチョコチップをちりばめて焼いた。


「美味しいじゃん!」

「あー、幸せ~♪」

「ありがとう!」


 ふぅ…良かった…。


「これで渡せるわね!」

「どんな反応するかな~♪」

「ドキドキだね」


 3人それぞれ緊張しつつも、愛情込めて作った手作りを、当日無事に渡すことが出来た。

 美味しいって言ってもらえるかな。

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