11話 決めた告白

『つばめちゃん、明日は予定あるかな?』

『特にないよー!』

『なら、会わない?』

『OKー!』


 僕からつばめちゃんを誘った。

 ドキドキしながら、2人で待ち合わせ場所と時間を話し合う。

 翌日。

 待ち合わせ場所で待っていると、周りは家族連れやカップルを見かけた。

 ちゃんと目的を果たせるだろうか。

 そんな不安を抱いていると、「のんちゃーん!」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「つばめちゃーん!」


 今日も綺麗で可愛い平柳ひらやなぎつばめちゃん。

 茶色のコート、白のニットがよく似合う。

 ワインレッドのプリーツスカートが揺れている。


「遅くなってごめんね」

「今来たとこだから大丈夫だよ」


 なんだか、よそよそしいような。


「どうしたの?」

「…ううん、さっ行こう!」


 先に歩き出したつばめちゃん。

 僕は慌てて追い、横に並んで歩いた。



 さらに大人っぽくなった彼を見て驚いた。

 身長が伸びていて越されてしまった。

 横に並んで歩いて大丈夫だろうか。

 釣り合っているのか。

 すれ違う人たちの様子をちらちらと見ると、好意的に感じ取れた。

 羨望の目も中にはあって、ちょっとだけ自信が出てきた。

 映画を観にやって来た。

 事前に話し合った結果、ホラーを選択。

 爆発的な人気だったからどんな感じなのだろうと、興味本位で選択した。

 真ん中辺りの席に座り、映画が始まる。

 とてもオドロオドロしく、血がドバドバで、今にもスクリーンから出てきて襲われるのではないかと恐怖を感じて、つい隣に座る挑夢のぞむ君を見る。

 彼は平然と映画を観ていた。

 まるで「ふーん」みたいな感じで。

 あれ?感覚が違うのかな。

 すると私の視線を感じたのか、挑夢君は私の方を見た。


「怖い?」


 小声で聞いてきた。

 私は頷く。


「途中だけど、出ようか?」


 心配してくれている。

 でも、この映画は約2時間。

 残り30分はあるから、ここまできたら最後まで観ようと思い、首を横に振った。


「分かった」


 そう言って、彼は私の右手を握った。

 だから私は左手を握っている手の上に被せた。


「強く握って良いからね」


 彼はまた映画に集中した。

 私も頑張ってスクリーンの方を観た。

 やっぱり怖くて目を瞑り、ギュッと強く握った。



「い、痛くなかった?」

「痛くないよ、大丈夫」


 残り10分になる頃には、怖さはなくなり、何故の所が明かされて、とても悲しいお話だった。

 ちょっとウルッときてしまった。

 エンディングが終わると、続きを匂わせる終わり方で、やっぱり怖さで終わった。

 挑夢君の手を強く握っていたから、痛くなかったか心配で申し訳なかった。

 でも大丈夫と言っていたから安心した。

 今はファミレスにいて向かい合って座っている。


「それにしても怖かったね~」

「うんうん」


 平然としていたのに挑夢君も怖かったのか。


「怖がってなかったような…」

「足はガタガタだったよ?」


 気付かなかった。


「まあ最後は可哀想だったね」

「本当に、あの子の無念を晴らせて良かった」

「でも、あの続きの匂わせはヤバい」

「結局、恐怖で終わったもんね」

「続きあるのかな?」

「もう観ないから!」

「今度はコメディか恋愛にしよっか!アニメも良いね~」

「そうしようそうしよう!」


 もうホラーなんか観ない、そう私は決めた。


「ここ出たら、連れて行きたい所があるから良い?」

「?…良いよ」


 どこに連れてってくれるのかな。

 不思議に思っていると、注文していた食後の巨大パフェがやってきた。


「シェアしますか」

「うん!」


 2人仲良くパフェを食べたのであった。



 到着したのは広い公園。

 その中に入ると、大きなクリスマスツリーがあった。


「うわぁ~すごーい!」


 暗くなった午後6時過ぎ。

 装飾された飾りはキラキラと輝いていて、てっぺんの星は一番星のように光っていた。


「綺麗だね」

「うん!初めて見たよ!」


 私は大興奮していた。

 何枚もパシャパシャとスマホで写真を撮った。

 あとでみやびさとに送ろう。

 写真を撮り終えると、挑夢君はそわそわしていた。

 どうしたんだろうー…。


「のんちゃん?」

「…あっ!えっとー…」


 様子がおかしい。

 じっと彼を見た。


「具合悪い?」

「ううん、すこぶる元気だよ」

「じゃあ、帰りたいとか?」

「ううん、違う違う」

「隠し事?」

「…」


 隠し事、図星のようだ。

 何かを打ち明けるのかな。

 私に言いづらい隠し事って一体ー…。


「つばめちゃん」


 彼は私の両肩を掴んだ。


「のんちゃん?」


 どこか勢いを感じ取り、私はそれに圧倒される。


「つばめちゃん、僕…」


 緊張が張り詰める。

 数分経過した後、ようやく彼は言った。


「ずっと言いたかったことがあるんだ」


 深呼吸をしてから挑夢君は続きを言った。


「つばめちゃんが…


 耳を疑った。

 今、なんってー…。


「ごめん」

「えっ、ごめんって!?」


 慌てながらもショックを受けた表情になる挑夢君。


「ち、違うの!」


 私も慌てて、でも落ち着いてこう言った。


「もう一度言って?」

「あっ…う、うん…」


 安心した挑夢君は、優しい表情になって落ち着きを取り戻す。


「つばめちゃんのことが、です」


 空耳じゃなかった。


「付き合って下さい」


 返事の言葉が言えなくて、とっさに彼を抱き締めてそれを答えにした。


「…挑夢君」

「ん?」


 優しく頭を撫でてくれる。

 心地好い。幸せだ。


「よろしくお願いします」


 こうして、私と挑夢君は恋人同士になった。

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