第84話
「も~い~くつね~る~と~♪」
「お正月」
「歌ってよー!」
大晦日である。
「兄ちゃん兄ちゃん!」
「なんだ?」
「明日の元日、どう過ごすの?」
あー、どうしようかなー。
「決めてないや」
予定は全くないのだ。
「じゃあさ、
何を言ってんだ。
「無理だね」
「えー!」
「いきなりはダメだぞ」
「聞いてよー!」
それから幸虎はしつこく「聞いて聞いて」とうるさいため、メッセージを送った。
数分後、返事がきた。
『良いよ!時間と場所決めよう!』
まさかの快諾。
「幸虎、明日良いってさ」
「本当に!?わぁーい!」
喜んでもらえて良かった。
明日から新年か。早いなぁ…。
※
いきなりのお誘いに驚いた。
幸虎君がうるさいって、ふふっ。
本当に仲の良い兄弟だなぁ。
「可愛い」
呟いた。
どんな服を着ていこうかな。
選ぶのって楽しいんだよね。
次の日になったら、変更したりして。
天気も良いし、お出掛け日和だね。
※
「悪かったな」
「ううん、大丈夫」
寝ている幸虎をおぶる俺。
隣にいる
日中、ショッピングモール内をぐるぐる見て回り、屋台も見て回って景品やらおまけやらを貰い。
たくさん遊んだからか、眠くなってしまい、おぶることとなった。
今は帰りである。
「楽しかったね♪」
「そうだな」
幸虎が親と一緒にいてくれたら、もっと楽しかったんだが…まあいいか。
「幸虎君、本当に可愛いなぁ」
琴坂は幸虎の顔を見ながら言った。
「私にはお兄ちゃんしかいないから、弟妹に憧れあるんだ」
「そうなんだ。元気ありすぎて大変だぞ」
「ふふふ」
たいしたことない会話が続いた所で。
「勉強、大詰めだよな」
「そうだね…緊張してる」
時間ないってのに、付き合わして悪いな。
「ごめんな、貴重な時間をさ」
「大丈夫。息抜きに良かったよ」
そう言ってもらえて助かる。
「それにね」
琴坂は立ち止まった。
俺も止まる。
「
彼女は俺の目を見て言った。
不意討ちは良くない。
ドキドキしてきた。
というより、バクバクしてる。
幸虎、起きるなよ。
起きてても寝た振りしろよ。
「ありがとう」
「えへへ♪」
こうした時間もあっという間になくなるんだ。
“大人”って、そうなのかな。
時間を作っていく、上手く時間を使う。
これも“大人”なんだよな。
「幸虎君いるのに、送ってくれてありがとう」
「いえいえ」
送りたかったんだ。
時間を有効に使いたいからな。
「受験、頑張れよ」
「うん、ありがとう!」
琴坂は「またね!」と言って家の中に入って行った。
「さて、と」
ゆっくりと家に向かって歩いた。
家まで半分の所で幸虎は起きたのでおろし、手を繋いで帰った。
幸虎、ありがとな。
それにしても、兄ちゃんは疲れたよ。
※
雅ちゃんと兄ちゃんが楽しそうに話している時に目が覚めていた。
でも、起きちゃいけない気がして、寝てる振りをしていたのは、秘密だよ。
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