第82話
「
何度、声をかけたことか。
「
また無視かよ。
「う、うん…」
朝からずっと琴坂に無視されていた。
どうしてなのか。
なんとなく分かる。
危ないから伝えるな、と
早く機嫌なおんないかな…しんどいよ。
※
なんで教えてくれなかったの。
教えてくれた上で、危ないから待って、て言ってくれたら、ちゃんと言うこと聞くのに。
最初は怒りの感情に任せて無視し続けたけど、そろそろ限界。
仲直りするタイミングが見つからない。
「良いの?この授業が終われば放課後だよ?」
里が心配していた。
「うーん…限界、なんだよね…」
本音がポロッと溢れた。
「しょうがないなぁー。私がなんとかするよ!」
「ありがとう、里」
頼りになるなぁ、里は。
はぁ…早く仲直りがしたいよ。
※
授業中に届いた手紙。
開いてみると『空き教室に来て』と宮司からだった。
何だよと思いつつ、今、空き教室前に来ていた。
コンコンとノックをしてからドアを開けた。
そこには。
「あっ…」
開いてるドアの前で風にあたる琴坂がいた。
髪がなびいて、綺麗に見えた。
肩辺りだった長さが、少し伸びたんだな…。
「琴坂」
呼んだ。
彼女は俺の方を向いた。
「あっ…
やっと反応してくれたー!
琴坂が窓を閉めて、俺の方に向き合った所で。
「すまなかった」
俺は頭を下げた。
「わっ!?」
驚いた琴坂も「ごめんなさい」と頭を下げた。
同じタイミングでそっと顔を上げた俺達。
目が合って。
「「あはは!」」
笑ってしまった。
※
「教えれば良かったんだな」
「そうだよ!」
やっと琴坂の気持ちが分かった。
「無視は途中からキツかった!」
だよなーって思いつつ、苦笑いして。
「悪かったって」
仲直り出来て安心した。
「雅虎君、今日は一緒に帰ろう?」
「良いよ、帰るか」
仲直りの印のように、一緒に帰ることにした。
もうすぐ冬休み。
この休みが終わると、卒業式までのカウントダウンが始まる。
気がつけば、進路は決まっていた。
俺は短大に。
琴坂は4年制大学の文学部に。
宮司は美容専門学校に。推薦で合格している。
4年制大学組は試験次第ではあるが、判定は上々で、先生からのお墨付きもあって、きちんと勉強していれば大丈夫とのこと。
俺の場合はスタートダッシュが遅かったから短大にして、推薦で合格をしている。
何?将来はまだ明かしてないって?
確かにな。
と言っても、分かるだろ。
幼児保育で幼稚園教諭を目指してるわけだ。
一応、保育の資格も取れるなら取っとくけど。
小学生の時から、学校を通して園児との交流の中で、よく先生達に「接し方が上手いね」と褒められていた。
接し方は、弟の
弟には感謝しないとな。
それぞれ、4月から新しい生活となる。
めったに会えなくなるなぁ…。
少しだけ、寂しい気持ちになった。
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