第73話

 バックにいて様子を見ていた。

 気弱なふじが葛藤していた。

 その様子を僕の隣にいたみなとが助けてやりたいとばかりに、身体がウズウズしていた。

「見てらんねー」

 僕は「待って」と止めた。

「はぁ?困ってんだぞ藤!」

 分かってる。

「大丈夫、待ってて」

 そう言い聞かせて、僕はバックから出て行った。

 悪いやつらがいなくなった後、先輩方や他にいた人達から拍手されて、恥ずかしくなった。

 僕は何もしていないのに。

 穴があったら入りたくなった。



「大丈夫だったでしょ?」

挑夢のぞむ、教えろ」

 毎回、前置きというか、事前説明がないから、驚かされる今日この頃。

 琴坂ことさか達も頷いている。

 知りたいよな。

瀬戸せと君は拳でやり返すけど、小祝こいわい君の場合は態度でやり返す、感じでね」

 何を言ってんだか。

「つまり、こういう時は小祝君が出てくると思ったんだよ。これを見て」

 挑夢のスマホには小祝のプロフィールが映し出されていた。

 名前、生年月日、血液型、出身中学という基本情報があった。

 そして、性格や生い立ちの所で目に留まる。

「性格…大人しい、寡黙、無口」

 確かにそうだ。

「そんで生い立ちは…」

 はい?

「挑夢、これって…」

「うん、さっきに繋がるでしょ?」

 小祝はいわゆる、だった。

 親に干渉されることなく、小祝自身の気持ちに寄り添っていた。

 習い事で良い結果を出すと、めちゃめちゃ褒められた、らしい(プロフィールの通りに読んでますから)。

 母親は割りと分かりやすく小祝を愛情を持って育てていたが、父親は頑固で無口で放ったらかしなため、小祝は父親に似たのだろう。

 5つ上に兄、2つ下に妹弟の双子。

 その双子がいじめっ子達に泣かされていた時に、真っ先に助けに行ったのが小祝。

 拳で返すのではなく、圧の強い態度で追い払ったそうだ。

「だから、か」

「うん」

 ニコニコの挑夢。

「カッコ良い!」

 と宮司みやじ

「だね!」

 と琴坂。

「あんな兄なら頼りになるー!」

 とつばめさん。

「俺にはないな」

 と拓郎たくろう

「ちゃちゃ入れなくても、解決しちゃうわけだよ♪」

 最後の1つだったマカロンを頬張り、至福の時を過ごす挑夢だった。



 バックにいて見守っていた私。

 出たかったけど、身体が動けなくて、足はガタガタと震えていた。

 聡希さとき君があんな人だとは知らなかった。

 私の隣にいた絢子あやこちゃんも仰天している。

 湊君も口をあんぐりと開けて呆然。

 何を考えているのか、何にも言わないから、よけいに驚いた。

「聡希、すんげーな」

 と湊君。

「訳分かんないんだけど!」

 と絢子ちゃん。

「あとで、もっと聡希のことを知るために、プチ会見させなきゃ!」

 絢子ちゃん、変なこと言ってるし。

「ありがとうって言わなきゃ…」

 あとで、ちゃんと。

 2人の時にしようかな。

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