第70話
幼稚園に入ってから同年代の子と接するようになってからも、僕は他人に興味を示さなかった。
小学生になってから、さらに人数が増えても、やはり興味を示さなかった。
僕は人に興味を示さない分、小説や漫画、アニメの世界に没頭していて、彼らからたくさんの事を学んでいた。
それで、満足していた。
周りが恋や性に目覚めているのに、僕は変わらずみんなとは違うことに心踊らせ、ときめいていた。
高校生になっても変わらない。
そんな時、斜め後ろの席の女子に言われた。
『話しかけられたら、ちゃんとその人を見た方が良いよ』
衝撃を受けた。
初めて、注意をされた。
初めて、怒られた。
心が動いた、気がした。
それからは、隣の
うるさいけど、うるさくない。
そんな彼らの世界に、今日も僕は身を委ねる。
※
文化祭当日。
学校開放前に、空き教室で
それを廊下で待つ俺と
「どんな魔法かな~?」
今日もニコニコの挑夢。
「さあな」
知らんよ、んなこと。
「兄さん、誰かこっちに向かってますね」
瀬戸が指さした方を見ると、おっ。
「挑夢」
隣の挑夢に肘でつついて教えた。
「ん~?あっ!」
呼ぶ前に、挑夢は迎えに行った。
「つばめさん、ですか?」
「多分な」
俺はこれで確信した。
挑夢の好きな人は、つばめさんだ。
間違いない。
「恋…ですか」
ボソッと呟いた小祝。
言葉に感情はないが、顔にはちょっとだけ温かみがあった。
よく見たら、小祝の感情が分かるようになってきた。
「小祝、お前さ」
「何でしょう?」
小祝は俺の方を見た。
「よく見たら、分かりやすいな」
すると目をまん丸にして、からの、無表情に戻り。
「そんなことないです」
俯いた。
感情を隠すかのように。
面白いやつだな。
そんな会話をしていると、挑夢が戻って来た。
隣には、やっぱりそうだ。
「おはよう、つばめさん」
「やぁ!
いつもと雰囲気が違っていた。
スカートなんて珍しいな。
「てか、何で入れたんですか?」
まだ開放前なのに。
「渡し物がありましてーって言ったら通してくれた」
大きな紙袋を見せてきた。
うちの学校、ゆるっ!
「でも、本当だからね!みぃ達どこ?」
「ここ」
「んじゃまた!」
つばめさんは空き教室に入って行った。
何を持ってきたのやら。
※
「お待たせー!入って入って!」
宮司がドアを開けて顔だけ出して、俺達を呼んだ。
なんとなく「お邪魔しまーす」と言ってから入ると。
「「「おぉ…」」」
声が漏れた俺と挑夢と瀬戸。
「…」
小祝は…分からん。
が、停止はしているということは、驚いているんだろう。
弓削さんは、魔法にかかった。
青のカラーコンタクト、金髪のウィッグを使って。
「1番グレーテルっぽくない?」
宮司はニッと笑って、自信に満ちた顔になっていた。
「横に並ぶの嫌かも!」
「絢子ちゃんいないと、私、死んじゃうから!」
「みおなん、ありがとう!」
仲良しだこと。
「あとは、女優になってよ!」
「は、はい!」
女優?なんじゃそりゃ。
「教室に悪いやつらが来ても動じないこと」
弓削さんは頷く。
「得意な英語で乗り切りなさい」
ん?えっ?
「英語、ペラペラなのか?」
「小さい頃から、教室に通ってまして…」
なるほどな。
「絶対、目は泳いじゃダメ!バレるから!」
力強く頷く弓削さん。
「んじゃ、教室戻るんで!先輩達、時間来たら来て下さーい♪」
「ありがとうございました!」
絢子と弓削さんは教室に戻って行った。
「兄さん達、また」
瀬戸も2人の後を追う。
小祝はペコッと頭を下げてから行った。
「心配だなぁ…」
と琴坂。
「ちゃんと言うこと聞いたら大丈夫大丈夫」
と宮司。
「見違えたね~」
と挑夢。
「あんなグレーテルちゃん…ドキドキ」
とつばめさん。
無事に楽しくなれば良いが。
と、ドアが開いた。
「寝坊したー!」
拓郎、到着。
「バカー!」
宮司が拓郎の頭を叩く。
「いってぇ!
「遅刻の、寝坊の罰」
「ううっ…」
叩かれた頭を押さえる拓郎であった。
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