第69話

 明日は文化祭。

 3年生はクラスで不参加表明はあり。

 だから、俺のクラスは不参加を選択。

 だが、文化祭に来てはいけないこともなければ、行かなくても良いわけで。

 個人の自由となっていた。

「どうする明日?」

 と宮司みやじ

「みんなが行くなら行こっかな!」

 と拓郎たくろう

「俺も拓郎に同意」

 と俺。

「私も、みんなが行くなら」

 と琴坂ことさか

「じゃあ~行く?」

 と挑夢のぞむ

 放課後にゆるい感じで会話していた。

 挑夢のクラスも文化祭不参加だそうだ。

「なら、行くことにしよ!」

 リーダーな宮司さん。

 てなわけで、明日は行くことに決まった。

「つばめ、呼んどくね」

 琴坂はそう言うと。

「ううん、僕が呼ぶよ」

「のんちゃんが?」

 どうした挑夢。

「ダメかな?」

「いいよ、お願いします」

「ありがとう~♪」

 笑顔になる挑夢。

絢子あやこちゃんのクラスに突撃で」

「だな!」

「お菓子がメインって言ってたな~」

「へぇー」

「楽しみだね」

 お菓子か…メルヘンだな。

 ぼやっとしていたらスマホが振動した。

 噂をすれば絢子からだ。

「ん?」

 2度見して、眉間にしわが寄る。

「どうしたの?」

 琴坂が心配そうに声をかけてきた。

「これ…」

「あっ…」


『まだ学校?だったら助けて!』


 俺は一体、何に巻き込まれんの?



 宮司と拓郎は用事で先に2人で帰り、残った俺と挑夢と琴坂の3人で、絢子のクラスに行った。

「どうした絢子」

虎兄とらにい!」

 教室には絢子と瀬戸せと弓削ゆげさんとー…。

「お疲れ様です」

 誰だよコイツ。また新しい友達か?

「この子は小祝こいわい君!私の隣の席で…て、そんなことよりさ!」

 そうそう、何だ何だ。

「あの…これ…」

 泣きそうな顔で弓削さんは俺達にスマホを見せてくれた。

「…!?」

 これは、まずい。

「前の学校の人達が…人達が…」

 呼吸が荒くなる弓削さん。

「落ち着いて、座ろっか」

 琴坂が弓削さんをケアする。

「どうしよう、みおなん、学校来れないじゃん!」

 絢子は怒りと悔しさと悩ましさが入り交じる表情になる。

「兄さん、どうすれば…」

 瀬戸も真剣に悩んでいた。

「…」

 そんな中、動じていない小祝。

 コイツ、心配せんのかいな。

 と思ったが、一瞬少しだけ、表情が曇った気がした。

 起伏はないが、よく見ると、分かるという、めんどくさいヤツのようだ。

「絢子、文化祭の時の服装は?」

「ヘンゼルとグレーテル風の服装だけど」

 お菓子と言ったらのド定番か。

「お菓子作る人は、普通にジャージにエプロン」

 ふむふむ。

「弓削さんはどっち?」

「私はヘンゼルで、みおなんはグレーテルだよ。ペアで行動するってなってるから」

 うーん…。キッチン担当ではないのか。

「琴坂、宮司に電話して」

「うん」

 電話をすると『どしたー?』と直ぐ出てくれた。

 琴坂はスピーカーにして、みんなで会話する。

 訳を話すと。

『OK、明日お姉さんが澪那みおなちゃんに魔法をかけるから、ご心配なく!』

 どんな魔法かは教えてくれないようだ。

『私の言うことをちゃんと聞けば、絶対バレないから!』

 なんだ、その余裕。

「ありがとうございます…」

 弱々しく感謝を述べた弓削さん。

『大船に乗ったつもりで、任せなさい!』

「はい」

 通話は終わった。

「宮司に任せよう」

「だね」

さとちゃん、さすがだね~」

 頼りになるリーダーなんで。

「でも、どうして文化祭のこと知ってんの?てか、学校教えた?」

 絢子は弓削さんに質問。

 弓削さんは首を横にぶんぶん振った。

「誰にも教えてないよ…どうして…」

 今にも泣きそうだ。

「澪那ちゃん…」

 背中を擦る琴坂。

「その何故は僕が調べとくね~」

 ここぞの挑夢。

「ありがとな」

「明日、お菓子いっぱい買って?」

「へいへい」

「わぁ~い♪」

 ちゃっかりしてんな。

「必ず守るからね、みおなん!」

「ありがとう…絢子ちゃん」

みなとも、こいわっちも協力してね!」

「あいよ」

「こいわっち…」

 あだ名に引っ掛かるの分かるぞ小祝。


 そんなこんなで、明日の嵐のような暗雲を迎えることとなった。

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