第68話

 みなと君が、制服を正した。

 2学期前に、メッセージで伝えてみた。

 うん、言ってみるものだ。

「本当に正したんだね?」

「戻そうか?」

「ううん、今の方が良い」

「そっか」

 素っ気なくて、あんまり喋らないけど、それが私には調度良い。

 うるさい人が隣だと、嫌だから。

 席替えをしたけれど、結局、私と湊君は移動をしなかった。

 そうしたら、絢子あやこちゃんが移動してきて、私の前に決まった。

「これで3人一緒だねー♪」

「俺は関係ないだろ」

「関係ありありだし!」

 賑やかだなぁ。

「あっ、小祝こいわい君、よろー♪」

「うん、よろしく」

 絢子ちゃんの隣は、今本を読んでいる小祝 聡希さとき君。

 湊君よりも、あまり喋らない男の子。

 目鼻立ちは整っていて、柔らかい印象を持つ。

 成績は常に上位、運動もそこそこできる。

 ただ見た目とは違って、起伏があまりないため、何を考えているのかは分からない。

「小祝君、うるさかったら言ってね?」

 絢子ちゃんは積極的に話しかけている。

「気にしないから。お構い無く」

 冷静沈着に言った小祝君。

 さっきから絢子ちゃんを見ず、本から目を離していない。

 ちょっとだけ、イラッとした。

「あは、は…」

 苦笑する絢子ちゃんは、私と湊君を見た。

 コイツにビシッと言ってくれ!

 なんて訴えている。

 すると湊君は目を逸らしてしらんぷり。

 私は何故か、絢子ちゃんのメッセージに応えた。

「こ、小祝君!」

 すると、彼は私の方に振り向いた。

 じっと見ているし。

「何?」

 無表情だし。

 なんだろう…嫌だ。

 何が嫌なのかを言語化出来ない…。

 でも、嫌なものは嫌だ。


「話しかけられたら、ちゃんとその人を見た方が良いよ」


 あー、言っちゃった…。

 冷や汗が流れる。

 小祝君の様子を見ると。


「…うん」


 …無・表・情…

 でも…。


「ごめん、気をつけるよ」


 そう言って前を向き、読書を再開した。


 掴み所がないなぁ…。

「みおなん、みおなん」

 小声で絢子ちゃんが私を呼んだ。

 小声のまま一言。

「ありがとね」

 私は首を横に振る。

 本当にイラッとしたから言っただけ。

 私の周りには独特な人が集まるなぁ…。

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