第61話

 みんなで楽しく遊んだ。

 泳いだり、水をバシャバシャとかけあったり、浮き輪でただぷかぷか浮いたり。

 砂遊びもして、意味なく穴堀、磯辺いそべは砂浜に埋まってたし。

 昼はラーメンやらカレーやらを食べて、おやつの時間にはかき氷を食べた。

 時間はあっという間に過ぎて、夕方になっていた。

 先に1年生3人は帰った。

 なんか用事がどうのこうのだそうだ。

 きっと心の内に迫るのだろう。

 残った俺ら3年生組プラス幸虎ゆきとらはそろそろ帰ろうかって感じでいた。

 着替えの済んでる挑夢のぞむとつばめさんと幸虎は、近くのコンビニに行った。

 飲み物を買ってくるとのこと。

 幸虎はただついて行きたがっていた為、お願いした。

 磯辺と宮司みやじは借りていたパラソルを返しに行った。

 残った俺と琴坂ことさかは夕陽を見ていた。

「綺麗だね」

「だな」

 キラキラしている海。

 茜色に染まっていて、幻想的に見えた。

 ずっと見ていられるな。

 でも、俺は海よりもー…。

「楽しかったね」

「うん」

 隣の琴坂をチラッと見ていた。

 このTシャツの下に着てある水着…気になる。

 見たいなんて言ったらダメだよな。

 でもなー…水着姿が見てみたい。

 あー、いや、ここは本人の意思が大事だ。

 うだうだ考えていると。

雅虎まさとら君」

 琴坂が俺の方を向いた。

「何?」

 冷静を装う。

「私の水着姿…見てみたい…かな?」

 恥ずかしそうに、もじもじしながら、琴坂は俺に問う。

 思っていたことが起ころうとしている。

 答え方は、イエスかノーか。

 ノーと言えばガッカリするかな?

 イエスと言えば怒られる?または?

 俺は自問自答する。

 見たいか、見たくないか…。

 答えはー…。

「見せてくれるなら…是非…」

 はっきりと見たいなんて言えない。

 でも、見たいから、琴坂に任せた。

 琴坂は顔を赤くしつつも、手をグッと握り締めて、決心したのか。

 ゆっくりと、Tシャツを、脱いだ。


「見ても良いけど…じっくりと見ないでね?」


 上はクリーム色でフリルの付いたオフショルダーで、下は花柄のスカートだった。

 そして、知ってしまった。

 今まで気にしていなかった、胸が、大きいということ。

「あの…うん、恥ずかしいなら、Tシャツ着なさい」

「あっ…うん…」

 琴坂は急いでTシャツを着た。

 ドクドクドクドク、鼓動は激しい。

 琴坂に聞こえるんじゃないかってくらいに。

 頭もくらくらする。

「どう…だった?」

 それは、もう…。

「似合ってたよ」

 物足りないかな?よし。

「可愛いよ」

 思ったことを口にした。

「良かった…ありがとう」

 やっと笑ってくれた。

「失礼かもしんないけど、隠してたのか?胸…」

「あっ…うん…隠してた」

 気付かないよ。

「小学生の時に変化に気付いて、どんどん大きくなるから、隠す方法を見つけて」

「うん」

「女の人が男装する時に使う、さらしというか胸を潰すそういう下着があって、それをずっと使ってるの」

 初めて知った。さらしの機能のある下着があるなんてな。

「使っていれば成長止まると思ったし、身長に栄養がいくかと思ったら、そうではなかったけどね」

 苦笑する琴坂。

「そうだったんだ」

「高校はどうしてもスクール水着を着たくなかったから、水泳の授業のない今の学校にしたんだ」

「なるほどな」

 大変な思いをしてきたんだろうな。

「さっ帰ろう!着替えなきゃ!」

「だな」

 更衣室に向かい走った。



 無事に帰宅すると、両親が出迎えた。

「おかえりなさい」

「「ただいま」」

 疲れたな…。

「海、すんげー楽しかった!」

「あら、良かったわね。幸虎、手洗いうがいしてきなさい」

「はーい!」

 小学生は元気だな。

「ありがとな、雅虎」

 と父さん。

「別に」

 みんなも面倒見てくれたおかげだよ。

「あんたも手洗いうがい」

 と母さん。

「へいへい」

 俺、高校生だぞ。

「兄ちゃん、早く!」

 幸虎に呼ばれてしまった。


 楽しかった、夏の海。

 琴坂の秘密を知ってしまった日でもあった。

 思い出すとドキドキしてくる。

 あまり思い出さないように、一旦忘れよう、そうしよう。

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