小話 その8

 パラソルを返し終えてからのこと。

 磯辺いそべ君と一緒に、みやび雅虎まさとら君の様子を遠くから見ていた。

「良い雰囲気だな」

「そうね」

 本当にまだ付き合っていないなんて、不思議なものだ。

「ねぇ?」

「何だよ?」

 この人は鈍感だな。

 はぁ…と溜め息を吐き。

「何でもない」

 訝しげてる磯辺君。

 言わなきゃダメかな?

 全く…気付いてよね。



「みぃと雅虎君、上手くいってるかな?」

「あと1歩だもんね~」

 幸虎ゆきとら君を真ん中に、左に私、右にのんちゃん、並んで歩く。

「兄ちゃん達、付き合ってないんでしょ?」

 幸虎君も知っているようだ。

「そうらしいね~」

挑夢のぞむ君、なんとかならないの?」

「ならないね~こればっかりは」

 私達がどれだけお膳立てしても、進まないものは進まない。

 幸虎君にはまだ分からないだろう。

「早く付き合って、いつか結婚してほしいな」

 ちょっと驚いた。

 だから私は聞いてみた。

「雅のこと、好き?」

 すると、満面の笑顔で。

「うん、好きだよ!早く姉ちゃんって呼びたい!」

 この子は将来を見ているようだ。

「そっかそっかー!」

 可愛いなぁ、本当に。

「ところでさ?」

 幸虎君は私とのんちゃんを交互に見て。


「挑夢君とつばめちゃんは、好き同士なの?」


「「えっ」」


 初めてのことだった。

「あー、えっとぉ…」

 私はのんちゃんを見る。

 するとのんちゃんはニコッと笑い。

「好きだよ」

「うぇっ!?」

 変な声が出てしまった。

 それは、どういう…。

「友達だからね~」

「なーんだ、そっちかー」

 ガッカリする幸虎君を他所に、表情変えずにいるのんちゃん。

 一方の私はドキッとしたのが、損だなと思った。

「あっ、拓郎たくろう君とさとちゃんが手を振ってるー!」

 そう言って駆け出して行った幸虎君だった。

 残された私とのんちゃん。

 ちょっと気まずいかも。

「なんか、幸虎君、勘違いしていたね~」

 あっけらかんと言うのんちゃん。

「そう、だね」

 なんでかな?

 ちょっとだけ寂しい気持ちになっている。

「早く僕達も行こ~」

「うん」

 変だな私。

 忘れよう。

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