第60話
見てみると、こんなことが書かれていた。
『8月に私と一緒に海に行こう!』
う、海?何で?
『明日か明後日、水着買いに行こうねー!』
えっ?行く前提?
『んじゃ、よろしく~♪』
突然の事に驚きつつ、渋々行くこととなった。
絢子ちゃんは自由だなぁ…羨ましい。
※
夏だな…。
一応パラソルを借りて、場所取りも成功。
俺はパラソルの下で涼む。
暑すぎ…水浴び感覚であいつらの所に行こうかな。
「兄さん、飲み物っす」
「ん?頼んでないけど…」
「全員分、買ってきました」
「悪いな」
すっかり弟分だな、
リアル弟よりはめんどくさくないから良いが。
「兄ちゃーん!」
はぁ…。
親が日帰り旅行に行くから、
女子には可愛い可愛いってモテはやされ、図に乗っている。
「行かなくて良いんですか?」
「あー…うーん…」
結局、幸虎のいる砂場に向かう。
「初めての海、すげーな!」
「だな」
「父ちゃん達の日帰りより、すんげー楽しい!」
大興奮してる幸虎。
「俺からはぐれるなよ?」
「兄ちゃんの目の届くとこにいるってば!」
変な大人に絡まれたらヤバいからな。
「お待たせー!」
「わぁー!可愛いー!」
幸虎は先に宮司を褒めた。
子供の特権…俺には無理だ、そんなストレート。
海で遊んでいた磯辺と挑夢もこっちへ来た。
俺はどうしても振り向くことが出来ない。
緊張している。
今まで経験したことのない速度で、ドクドクと心臓が激しく鼓動を打っている。
「本当に可愛いね~」
と挑夢。
「見違えるな!」
と磯辺。
どうしよう、振り向くタイミング逃したかも。
「
「えっ!?」
ガバッと振り向いた。
そこにいたのは、宮司だけ。
「…」
プロポーションが完璧すぎる。
フリルの付いた白の水着を着ていた。
「今ね、つばめと絢子ちゃんが雅と
「どういうことだよ?」
「着替えは完了してんだけどね…あっ!やっと出てきた!こっちこっち!」
宮司が手を振っている方向を見る。
さらに鼓動が早くなった。
ヤバい、俺、倒れそう。
「わぁお…」
と磯辺。
だが、何故か宮司がすぐさま磯辺をビンタ。
「なんで!?」
「魅とれんな!」
あれ?それって…なるほど。
「知らなかった~」
挑夢は2人の様子にニヤニヤ。
「えっ?えっ?」
「バカ…」
磯辺よ、気付けや。
「お待たせしましたー!この2人、出たがらなくて」
と絢子。
淡いピンクの真ん中にリボンの付いた水着を着ていた。
「大変だったー大変だったー!」
つばめさんは青のストライプ柄の水着。
夏用の白のカーディガンを羽織って、麦わら帽子を被っている。
絢子の隣でおどおどしているのは
パステルカラーの黄色のワンピースタイプの水着を着ていた。
なんだか瀬戸の事を気にしている。
「おい瀬戸」
「なんすか?」
「弓削さんに何か言ってやれよ」
「えっ何で?」
「良いから」
瀬戸の背中を押して弓削さんの前に突き出した。
「あっと…」
「あー、見ないで見ないで」
顔を真っ赤にして俯く弓削さん。
瀬戸もなんだか落ち着かない様子だ。
それでも何とか言葉を出そうと、瀬戸は息を吸い込み。
「似合ってる…よ」
その一言だけ言った。
「あ、あ、あああありがとう…」
弓削さんは絢子の後ろに隠れてしまった。
恥ずかしいんだろうな。
「みぃ、私の後ろに隠れてもダメだよー」
「うわぁ!」
つばめさんが後ろにいた
真っ白の生地に、にこちゃんマークがでっかくプリントされた、自分より一回りも大きなサイズの半袖Tシャツを水着の上に着ていた。
「あ、あはは…」
笑って誤魔化している。
なんだろう…制服の時や私服の時は気にしていなかったが、なんだか胸の辺りが大きく見える。
「あんまり見ないで!」
「は、はい」
怒られてしまった。
「全員揃ったし、遊ぶぞー!」
「「「わぁー!」」」
時間の許す限り、海を夏を、楽しんだ。
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