第57話
『作戦失敗だったけど、話してくれるのを待つのみ!』
なるほど、でも心の扉は半開き的な感じなようだ。
「待つしかないな」
ボソッと呟く。
コンコン、ガチャ
「ノックまでは良いのに、返事待たずに開けんなや」
毎回毎回なんなんだ、全く。
「良いじゃん別にー!」
小学校6年生になる弟の
坊主頭で黒の太い縁の眼鏡をかけていて、部活はスクールバンド部に所属し、トランペットを吹いている。
早速ベッドで寛いでるし。
まあ、ちょっかいを出さなければ良いから放っといて勉強に集中する。
が、邪魔される。
「兄ちゃん、いつになったら彼女呼ぶの?会いたいなぁ」
「お前な!」
「ところで兄ちゃん」
「今度は何だ?」
いい加減にしてくれ、弟よ。
「高校卒業したら、どうすんの?」
グサッ、と心に突き刺さる。
「父ちゃん母ちゃん、心配してるよ」
悪気があって聞いたわけではない。
きっと父さん達が心配して、幸虎に聞いてこいと言われたのだろう。
「ごめん…まだでさ…」
項垂れる。
「ふーん」
天井をじっと見ている幸虎。
上を見ているのは、だいたい考えている時。
何を考えているのかは知らないが。
「邪魔して悪かったね」
ベッドが下りて出入口で立ち止まり。
「兄ちゃんなら、何にでもなれるよ」
振り返ってそう言った。
「えっ?」
俺は口を開けてポカンとする。
「進学したら?夢探しに良いっていうし」
夢探し…か…。
「て、先生が言ってた!」
と言って、俺の部屋を出て行った。
最後のは、聞きたくなかった。
そういえば、俺も6年の時の担任、幸虎と同じ先生だったな。
いらんこと言いやがったな。
まあ、良いけどさ。
早く決めないとー…。
焦る気持ちを置いといて、目の前の宿題に全力を注ぐ。
※
梅雨の終わり頃。
本格的な暑さがジリジリと押し寄せていた。
そんな中、絢子と
その成果が少し実ったという報告を受けた。
「ざっくりとなんだけど、前通っていた一貫校から出たくて、ここを受験して合格して入学したんだって言ってた」
空き教室に絢子の声が通る。
「詳細は分かんないけどね」
絢子には報告書を見せていないから、そりゃ分からんよな。
「
なんだろうな、良い予感と嫌な予感が同時に感じ取れる。
「夏休みに、決行したい!」
まさかの夏休み。
「たった1日で良いから!琴坂先輩も
なるほどな。
たった1日なら悪くない。
「分かった、その作戦、教えろ」
「ふっふっふっ」
ドヤ顔、腹立つ。
「夏を満喫するんじゃ!」
なんじゃそりゃ。
とりあえず、絢子の話を聞いてから、琴坂達にも聞いてみよう。
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