第56話
「なるほどぉー!そういうことですね!」
「てことは、俺と
「「うん」」
空き教室にいる。
「任せてー!この私が必ず任務成功させまーす!」
敬礼ポーズをして自信満々に言った
「難しい場合は諦めます」
冷静に言う
この2人に任せよう。
「今日はみおなん、日直だったから、そろそろ帰る頃だと思うから行ってきまーす!」
絢子はマッハで出て行った。
「あ、待てってば!んじゃ、兄さん
慌てて後を追った瀬戸。
「おう、頼んだぞ」
「慎重にね」
見送る俺と琴坂。
「上手くいくと良いな」
「大丈夫だよ、きっと」
琴坂が言うなら、そうだよな。
「さて、帰るか」
「うん、帰ろう」
2人で下校することにして、教室を後にした。
※
目の前に森枝さんがいる。
「ふふふ」
笑っている。怖いんだけど。
そして、私の隣には。
「悪いな」
瀬戸君がいる。
教室を出ようとしたら、2人に止められてしまい、自分の席に座っている。
瀬戸君は隣の自分の席に、森枝さんは私の前の席に。
「それで、何かな?」
聞いてみないと分からない。
「んとね?」
頬杖をついてニコニコしている森枝さん、不気味に見える。
「あっ、肩の力を抜いてー、リラックスリラックス」
そう言われても…。
「大丈夫、食ったりしないから」
ますます不安なんだけど。
「みおなん、私の話を聞いて?」
「?」
不思議な感じを抱いたけど、とりあえず傾聴することにした。
※
「姉さーん」
「あーちゃん」
私は姉さんが大好き。今もそう。
彼氏を紹介された時は凄く喜んだ。
とても優しい彼氏さんで嬉しかった。
一時期、姉さんのことを嫌いになりそうになった事がある。
小中の頃に周りから姉と比べられることが多く、とても嫌だった。
姉さんは運動神経抜群で勉強も出来るパーフェクト超人だったから。
剣道なんて全国レベルでベスト8までいく実力。
私はというと、なんの取り柄のない、人並みよりは少し出来るくらいのレベル。
姉の背中を見て剣道もやったけど、地方大会が限界だった。
それでも、私は姉の事を憧れて誇りに思っているのに、周りは私達姉妹を比べるから、その時だけは嫌で嫌で堪らなかった。
そんな私を姉と比べることなく、むしろ同等に見て接してくれたのが、
雅深ちゃんは姉と同い年なのに、お姫様みたいに可愛くて、よく真似していたな。
挑夢君はふわふわな感じで、いろんな事をしつこく聞いたけど、その都度分かりやすく教えてくれたな。
本当に姉さん達は憧れの存在。
特に姉さんは特別。
※
「今は姉さんと私を比べる人はいないから、姉さんが言っていた通り、この学校は良い学校だって思ってる」
突然の森枝さんの告白に、私は衝撃を受けた。
「びっくりした?」
「うん、凄く」
「まあまあ、深く考えないでー」
へらへら笑っている。
でも、どこか元気がない。
「私さ、みおなんと仲良くなりたくて、自分の事を話した」
えっ?
「みおなん、私は貴女と友達に、親友になりたい!」
パチパチと瞬きをする。
直球で「友達、親友になりたい」て初めて言われた。
どうしよう…。ちょっとだけ不安。
でも、ここまで話してくれた森枝さんのことを考えると…。
それに、悪い人ではない。
前の学校の人達とは違うのは分かる。
分かるけど…けど…。
「迷ってんのか?」
隣にいる瀬戸君が問いかける。
「それとも、怖い…とか?」
ビクッ…
“怖い”というワードに反応して、体がビクリと震えた。
そうだ、怖いんだ。
この先、仲良くなって、前みたいな事が起こったら…。
それで、私は、怖いって思っているんだ。
「私…私…わた、し…」
はぁはぁ、ぜぇぜぇ、呼吸が荒くなる。
「大丈夫?深呼吸だよ!吸ってー」
ゆっくり吸う。
「吐いてー」
息をゆっくり吐く。
「吸ってー」
すーっ…
「吐いてー」
はぁー…
「大丈夫?」
「ありがとう」
落ち着いた。
こんなに良い子なのは分かる…でも、やっぱり…。
「ごめん、私…まだ…その…」
申し訳ない、泣きたい。
「良いよ良いよ!」
森枝さんはニコッと笑って。
「ゆっくりで良いから!ゆっくり、友達なろう!」
その言葉に心がじんわり温かくなった。
「ありがとう…森枝さん」
「あ・や・こ!」
はっ!なんか前にも名前でって言っていたなぁ。
勇気を出して、振り絞るように。
「あっ…絢子…ちゃん」
と、名前を呼んだ。
「それで良し!」
ご満悦な絢子ちゃん。
「なら、俺の事も
「えっ!?」
それは無理無理。絶対に無理!
「冗談だし」
「ふぇ?」
間抜けな声が出た。腰が抜けそうになる。
「でも俺はお前と森枝のこと、呼び捨てして良いか?」
…!?
お、お、おおおお男の子に、呼び捨て…無理無理無理無理!
「良いよー呼び捨て!」
絢子ちゃんはすんなりOKしてるし!
「
瀬戸君は確認するように聞いてきた。
私は慌てて急いで。
「私のことは呼び捨てダメ!」
大きな声で拒否をした。
あっちゃ…傷ついたかな…。
恐る恐る顔を見ると。
「清々しい拒否だな。おもしれーやつ」
瀬戸君は笑っていた。
安心した。
「んじゃ、このまま名字な」
私は頷いた。
「あー、早く友達なりたーい!」
「バカか」
「人のことバカって言った人がバカなんだからねーだ!」
「へいへい」
この2人ならー…大丈夫なのかな…。
ちょっとは、信用…してみよう、と思う。
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