第52話

 絢子あやこちゃん、元気な子だったなぁ。

 可愛いって思ってしまった。

 愛嬌があるからね。

 それにしても、しばらく見ない内に大きくなったみなと君。

 あんなに小さくて、私の後ろを着いてくる泣き虫の男の子が。

 身長は伸びて、目はキリッと凛々しくなってね。

 それにしても、2人の後ろにいた、大人しいあの女の子。

 私達を見るや、すんごく怯えていたように見えた。

 今にも泣くんじゃないかってくらい。

 なんだか、私に似ている気がする。

 クラスにいても、1人で過ごしているのかな。

 まだ絢子ちゃんと湊君に心を開いていないようだし…。

 とても気になるなぁ…。

 なんて、ボーッとしていると。

琴坂ことさか!」

「は、はい!」

 呼ばれてた!?

「珍しいな、ボーッとすんな」

「すみません…」

 不覚だ。

「問題、解け」

「はい…」

 黒板の前に立ち、チョークを持って、問題を解いた。


 いつか、あの女の子と話がしたいな。



 上の空になる琴坂。珍しいな。

 でも、きちんと問題を解いてちゃっかり正解なのは、さすがだな。

 何を考えていたのだろう?

 まさか、俺かな?

 いや、俺ならニヤついたり顔が赤くなったりするか。

 なんて考えていると。

「おい宇城うき!」

「はい!」

 先生に呼ばれていた。

「アホ面してないで早く解け!」

 琴坂の時は優しかったのに、俺には厳しいとかないわ。

 心の中で文句を垂れて、表情には出さない。

 うん、これは解ける。

 黒板の前に立ち、チョークを持って、問題を解いた。

「あー…ボンミス発見、惜しいな!」

 マジかよ!

「はーい、解説すっぞー」

 ガッカリしながら席に着く。

「大丈夫?」

 琴坂が心配してくれた。

 ありがとう。君は俺の天使だ。



「2人してボーッとするなんてな」

「似た者同士~♪」

 磯辺いそべ宮司みやじがからかってきた。

「はいはい」

 俺は2人を洗い。

「あはは」

 琴坂は苦笑い。

「んじゃな!」

「おう」

 磯辺は塾だそうだ。

「またね、みやび!」

「また明日ね、さと

 宮司は家の用事とのこと。

 この2人、本当に仲良くなったもんだ。

 良い傾向だ。

 たまに、つばめさんも入れて3人で遊ぶこともあるって聞いた。

「ねぇ雅虎まさとら君」

「どうした?」

「湊君達なんだけど…」

 ん?どうかしたのか?

 うんうん悩んで、まとまったのか。

「湊君と絢子ちゃんの後ろにいた女の子、分かる?」

「あぁ…うん」

 その子がどうした。

「気になるの」

 えっ…嘘…。

「俺も同じこと思ってた」

「えっ?本当に?」

「本当だよ」

 うん、嬉しいな。

「あの女の子…どんな子だろう」

 俺もそう思う。

「直接話せれば良いけど…難しいよね」

「学年違うからな」

「うーん…」

 琴坂は悩む。

 相当気になるんだな。

「そ~んな時の僕だよ~」

「「あっ」」

 教室の出入口でニコニコしながら、俺のクラスを覗く男子生徒。


 挑夢のぞむのこと、忘れてた。

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