第53話

みやびちゃん!」

「あっ、みなと君」

 校門を出る前に湊君に呼び止められた。

「一緒に…帰っても?」

「良いよ」

 幼稚園は同じでも、小学校からは別々だったから、一緒に帰るなんて初めてだ。


「大きくなったねぇ」

「親戚のおばちゃんかよ」

「あはは」

 しばらく会わないと、親戚みたいなこと言っちゃうよ。

「雅ちゃん」

 思い詰めた顔で言った湊君。

 何かに悩んでいるのかな?

 なら、相談に乗ってあげないと。

「俺、実はさ…」

「うん」

 緊張が伝わり、私も緊張してきた。


「雅ちゃんのこと、ずっと好きだった」


 えっ…


「それって、お姉さんとしてとか、そういうやつだよね?」

 少し早口で言う。

「ううん、女の子としての方だよ」

 嘘…知らなかった…気付かなかった…。

「そう…だった、んだ…」

 何て言えば良いのか分からない。

 ありがとう?ごめんなさい?

 だから、「そうだったんだ」と、絞り出すように言った。

「でも、久しぶりに雅ちゃんに会いに教室行ったら、雅ちゃんには大事な人がいて…正直ショックだった」

 強制的に振られた側なんだよね湊君。

 あー、知っていたら傷付けないように上手く…って無理か。

「一生懸命勉強して同じ学校に入ったのにって思ったし」

 なんだか、申し訳ない気持ちになってきた。

「だから、その人がー…兄さんがどんな人か、もし悪いヤツなら雅ちゃんを奪おうって思ってたけど…めちゃくちゃ良い人だったから、諦めた」

 そんなに心配していたの?

「兄さんなら、雅ちゃんのこと、大丈夫だって思った!」

 なるほどね。

「ありがとう、心配してくれて」

「いえいえ」

 ずっと好きでいてくれることって、なかなかないんだよね。

 ずっと想うって凄いよ。

 新しい恋が見つかって付き合うってなったら、湊君はきっとその女の子を大事に出来るはず。

 早く素敵な女の子が見つかると良いな。

 身近な子にいたりして。

 そんなことを考えながら、他愛ない話を湊君として帰った。

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