第50話

 入学して1ヶ月。

 もう先輩の学年の階に侵入しても大丈夫なはず。

 驚くかな?

 あっ、がうちのことを言ったから…残念こ。

 とりま、ちゃっちゃと会いに行きますか。

 でも1人は嫌だなー…あっ、あの子。

 ずっと1人だから、気になってたし、これをきっかけに仲良くなろう。

 むふふ、そんで、誘っちゃえ。



「怖いよ」

「怖くなんかないから!ね?お願い!」

 いきなり話しかけられて、3年生に用事があるから着いて来て、と誘われてます。

 私、嫌なんだけど。トラウマあるし。

「着いて来てくれるだけでいいから!一言も言わなくていいからー!」

 そんな…うーん…。

「着いて行ってやれよ」

「「えっ?」」

 頬杖をついてふて腐れている隣の男の子。

 瀬戸せと君…よけいなことを!

「おー、なんちゃってヤンキー君、加勢してくれるのかい?ありがたや」

「ふん、名前で呼べ」

「あはは、ごめんなさい!瀬戸君!」

 あー、ますます調子に乗るじゃん!

「つか、俺も行く」

「マジで!?んじゃさ、3人で行こ行こ!」

「えっ?えっ?」

「分かった。昼休みな」

「ラジャー!」

 敬礼しないでよ!

 巻き込み事故だ…とほほ。



「久しぶりだね~みんなで集まるの~」

 と挑夢のぞむ

「だな」

 と俺。

「あれ以来だね」

 と琴坂ことさか

「事件だったあの日!」

 と宮司みやじ

「大袈裟に言うなよ」

 と磯辺いそべ

 今日は学校だからとつばめさんは断っている。

 空き教室で昼食を食べている俺ら。

 もう少し暖かくなったら、あの健康坂にと思っている。

 最終学年になっても、こうして変わらず過ごせるのは有難いことだ。

「なんか廊下が騒がしくない?」

 そう言って宮司はドアを少し開けて様子を見る。

「ちょっと!」

 手招きされたので、みんなで廊下の様子を見てみる。

「あっ」

「ん?」

 俺と挑夢は顔を見合わせた。

「なんか~、いたね?」

「あぁ…いたな」

 姉より小柄な少女。

 スカートの丈は姉よりも短いが、かといって周りの女子よりも膝下の丈の長さ。

 髪型はサイドテール。

 活発な印象に見える。

「挑夢、一旦忘れよう」

「そうだね~」

 そう言って俺と挑夢は元の位置に戻る。

 見なかったことにしよう、そうしよ…。

「いたー!!」

 バレた…。

「挑夢君も!」

「あはは…」

 苦笑いで対応する挑夢。

「この子…は?」

 恐る恐る琴坂は俺に聞いてきた。

 が、答える前に本人が言った。

「貴女が琴坂先輩ですね?姉さんから噂は聞いてます!」

「えっ?お、お姉さんって…」

「はい、私、といいます!」

 すると琴坂は「あー!」と思い出した。

杏子きょうこ先輩の妹さん?」

「はい!絢子あやこっていいます!」

「そうなんだぁ」

 素性が分かったからなのか、琴坂は一気に警戒心を解いた。

「なんで来た、絢子」

「姉さんがいたから入学したのさ」

 ドヤ顔、本当に姉妹だな。

「絢子ちゃん、またよろしくね~」

「うん!」

 挑夢はよろしくと言ったが、本当は絢子が苦手。

 ぐいぐい押す所が半端ではないから、引いてしまうと、なるべく会いたくないとも言っていた。

 後ろには友達らしき女子生徒がいた。

 おろおろと俺ら3年生にビビッているようだ。

 さらに隣には。

「あれ?みなと君?」

 なんで…いんだよ!

森枝もりえだが着いて来いって言うから着いて来た」

「そっかそっか」

 あーあ、何でイラついてんだよ。俺は子供かよ。

「あの…」

「…!?」

 ちょい待て、話しかけてきた。

「何だ?」

 ここはクールに大人の対応をしよう。

 ドキドキしていると。


みやびちゃんのこと、頼みます!」


 頭を深々と下げた瀬戸。

「は?」

 俺、今、間抜けな顔をしている、分かってる。

 突拍子のない言動に動揺したが、深呼吸をして。

「分かってる」

 この一言で精一杯だ。勘弁してくれ。

「安心しました」

 見た目に反して、良いヤツかも。

「あの、もう1つ良いっすか?」

 何だよ何だよ…。


って呼ばして下さい」


 えっ…。

「いやいや、止めろ止めろ」

「マジで、お願いします!」

「えー…」

 ただの後輩でいてくれよ。

「慕われたね雅虎まさとら君」

「あー…はは」

 とんでもないことになったもんだ。

「兄さん…くっくっくっ」

「笑うな磯辺」

「ふふ、面白い!」

「宮司まで」

 頭を抱えて溜め息を吐いた。

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