第49話

 俺と琴坂ことさかは一緒に下校していた。

「なぁ?」

「どうしたの?」

 聞きたい。聞きたくて聞きたくて、気になる。

「あの瀬戸せと?のこと、どう思ってんの?」

 あー、質問してしまったー!

 嫌われないよな?大丈夫だよな?な?

「もしかして…焼きもち?」

「うっ…」

 からかわれてる。真面目に答えてくれ。

雅虎まさとら君、安心して」

「?」


みなと君のことは、ただのとしか見てないから」


 スーッと心が軽くなるのが分かった。

「そう、か…」

 安心した。

「信じてよ」

「うん」

 そうだ、あの時、俺の事を信じてくれたんだから。

 信じてはいるが、より強く想おう。

 そう思ったら、行動に移していた。

「…!」

 ピクッと反応はあったが、直ぐに受け入れてくれた。

「まだ寒いからさ」

「突然はダメだよ」

 嫌がってなくて良かった。

 手を繋いで琴坂のペースに合わせて歩いた。



 わわっ、手を繋いでる。

 高校生だもん、恋はわんさか転がっているよね。

 私には縁遠いこと。

 もしそんなことが起こったら、私どうなるかな?

 あー、考えただけで顔が熱くなる!

 もう忘れよう。

 と思ったら、後ろから恐怖を感じた。

 振り返ると、えっ?隣の男の子!?

 柱に隠れて睨み付けてる。

 何で?私何かした?

 でも視線は私ではない。

 あっ、あの先輩方か!

 何でどうして?

 怖くて気になる…。

 震える足をなんとか動かして、彼に声をかけた。

「どう…し、たん…です、か?」

 彼は私に気づくなり、驚いた顔をした。

「お前…隣の席の…」

弓削ゆげ、です…弓削 澪那みおな、です」

「弓削、ね。覚えとく」

 素っ気ない、さすが学年1目立っている人。

「あの、何であの先輩方の…後を?」

「お前には関係ねーだろ」

 うぐっ…傷つく…。

「さっさと帰れ」

「ご、ごめんなさい」

 なんで私謝ってんの!?

 なんだか、腹が立ってきた。

「ここまで見ていて、教えないなんて!」

 私は友達でもなんでもない彼に口答えをしてしまった。

 人生で初めてかも。

 他人に怒りをぶつけたの。

 彼はキョトンとした顔になって、その後は頭をボリボリかいて、溜め息を吐いた。

「好きな人が、取られたから、どんなヤツか見てるんだよ」

「えっ」

「変なヤツなら直ぐ連れ去る予定がー…」

 が?

「なんか、良いヤツそうだなと…」

 諦めモード?

「でも、これから1年間、見張るけどな」

 腰パンして髪の色は明るめの、なんちゃってヤンキーなのに…意外と男らしい。

 見た目じゃないね。

「そっか…」

「他のヤツには言うなよ」

「うん、言わないよ」

 女の子の先輩とはどんな関係かは分からないけど、一途に想っていたことは分かった。

 こんな人なら、恋人になる女の子は大事にされるんだよね。

 良いなぁ…恋…。

 羨ましいって思ってしまった!

 気持ちを切り替えて切り替えて!

 落ち着いた所で。

「見張り、頑張ってね」

 応援の言葉を言ってから、その場を離れた。

「おっ…おう…」

 あれ?照れたような…気のせいか。



 隣の席の…さっきの女子…弓削だっけ?

 地味なのに…可愛い笑みをすんだな…。

 ドキッとしてしまった。

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