第47話

 卒業式が終わった。

 一応、俺と琴坂ことさか挑夢のぞむに、磯辺いそべ宮司みやじとつばめさんとで用意した花束を渡しに、生徒会室の前にいた。

 花束を渡す代表は、俺と琴坂。

「入りますか?」

「うん」

 ノックすると「どうぞー」と声が聞こえた。

 ドアを開けて入る。

「よっ」

「あら、みやびちゃんじゃなーい♪」

 杏子きょうこは琴坂に近づいて頭を撫でた。

 あれ、俺は俺?

「おい、杏子」

「なーんだ、いたんだ」

「こんにゃろう…」

 いつものことを今日くらい、やんなし。

「やあ2人とも」

 奥から金戸先輩が現れた。

金戸かねと先輩、答辞良かったです」

「ありがとう、宇城うき君」

 金戸先輩にも、杏子にも会えなくなるのか。

「これ…花束です」

「うわぁ!ありがとう♪あっ、真ん中はお菓子ー!」

「どうぞ金戸先輩」

「ありがとう!」

 嬉しそうに喜んで貰えて良かった。

「こぶりですが」

「これくらいが良いんだよ」

「デカイとさ、飾るの大変だし」

 そうだと思って小さめにしたわけです。

「あとで雅深まさみにも渡しに行くけど、どうする?」

「まっ、着いて来てって言うなら行かなくもないけど?」

 素直になれや。

「そんじゃ行くぞ」

「しょうがないなー」

 渋々な雰囲気を出しているのに、どこか楽しそうな杏子。

 なんだかんだで、そうだよな。



 俺と杏子に挑夢が合流。

 琴坂は遠慮して帰った。

「高嶺の華だね~」

「ヤバッ!世界が違う!」

「こんな所で大丈夫だろうか」

 雅深が通う女子高前に3人で待機していた。

 一応杏子から連絡はしてあるが。

「応答ない…見てるかな?」

 不安になる俺達。

 すると、「皆様!」と声をかけて来たのは、田所たどころさん。

「雅深様から連絡を頂きまして、探しました」

「申し訳ございません、迷惑かけてしまって」

「いえいえ」

 相変わらず大変そうだな。

「今は雅深様は旦那様奥様とお話されておりまして」

 違和感しかない。

「あの…田所さんもしかして、ボディーガードから執事になりましたか?」

 なんか、ね。

「は、はい…転職とはいえ、執事として仕えております」

 やっぱりな!

「執事って凄いじゃないですか!」

 興奮する杏子。

「カッコいいですね~」

 羨望の眼差しで田所さんを見る挑夢。

「いやいや、そんな…」

 謙遜する田所さん。

「そろそろこちらに来られるはずですが…あっ、いらっしゃいました」

 雅深と両親が現れた。

「先に行っている」

「また後でね」

「うん、お父さん

「こちらへどうぞ」

 田所さんは雅深の両親を車へ案内していった。

「待たせたわね」

「遅すぎ」

「それで何?」

「は~い、これ♪」

 挑夢は雅深に花束を渡した。

「わあ、可愛い♪ありがとう♪」

 喜ぶ雅深。

「みんなで準備したんだ」

「そう…本当にありがとう。他校の私にまで気を遣わせてごめんね」

「いいのいいの~」

「そうそう」

「はぁ…可愛いお姫様には敵わん」

 4人で笑い合った。

「ところで杏子、4月からは?」

「あたしは専門学校。雅深は?」

「私は短大」

 本当にバラバラになるんだ。

「何々、坊やたち?寂しいの?」

 杏子はニヤニヤする。ムカッ。

「いや、別に」

「うん、別に~」

 と俺と挑夢。

「素直になってよ2人とも」

 雅深までニヤニヤして。

「悪いお姉さま方だな挑夢」

「本当にそうだね~雅虎まさとら

「さっさと帰ろうか」

「だね~」

 と俺と挑夢は帰ろうとすると。

「ごめんごめん、あたしと雅深が悪かった!」

「うん、私と杏子が悪かったよ!」

 仲良しだこと。

「しゃーないな」

「もう少しいよっか~」

 なんて、何気ない会話をして、4人である場所に行くことにした。



「更地だな」

「なんもないね」

「ここだったんだよね」

「うん、僕達の出会いの場所」

 更地になって、売り地と書かれた看板だけあるこの場所は、俺達が通っていた幼稚園の跡地。

「たくさん遊んだな」

「たくさん喧嘩したし」

「でも仲直りは早かったような気がする」

「楽しかったね~」

 ここでの思い出は宝物。

 生涯忘れることはない。

「またここ来ない?」

「良いなそれ」

「賛成!」

「1年後はどう~?」

「あっ、俺と挑夢の卒業式の日にするか」

「約束ね!」

「約束~」

「忘れないようにしないとだね」

「だな」

 会える日が少なくなっても、1年後なら先着にしちゃえば良い。

 4人で新しい約束と共に、女子2人の門出を祝福するのだった。

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