第46話

 雅深まさみ琴坂ことさかを呼んで、本当に家族会議を開いたそうだ。

 琴坂は本当に呼ばれるとは思っていなく、ある意味不意打ちをくらったようだ。

 家族会議で雅深は本音を全部言ったそうだ。

 お父さんは申し訳なかったと何度も謝ったそうだ。

 彼女さんは泣いてしまい、出ていくと言ったが、そこは雅深自身が止めた。

 暮らして数年を考えたら、もういいと言った。

 誰かが出ていく所なんて2度と見たくない。

 結婚したら文句は言わない。認める。

 ただ、高校生活残り数ヶ月から、一人暮らしをお願いしたそうだ。

 田所たどころがいれば大丈夫、幼馴染みのみんなもいる。

 するとお父さんは了承した。

 これから雅深の環境は少し変わることになった。



「ありがとう、琴坂さん」

「いえいえ」

 居なくても…良かった気がする。

 なんて、言えない。

「田所、車」

「かしこまりました」

 ボディーガードとはいえ、執事の方が合ってるような。

 駐車場から車が出てきた。

 運転席から降り、後部座席のドアをスマートに開けた。

「どうぞ」

「じゃ、送るから乗って」

「は、はい!」

 緊張しながら乗り込み、送って頂いた。


「ここで良いです」

 家の前はさすがに恥ずかしいと思って手前で降りることにした。

「ありがとうございました」

 そそくさと降りると。

「琴坂さん」

 窓を開けた雅深さん。

「あとでみんなで会わない?」

「あっ、はい」

「また連絡するね。うるさいけど、楽しいと思うから」

「はい、分かりました」

 今度の約束は雅虎まさとら君達と一緒に遊びに行く。

 確かにうるさそうだけど、楽しいのは分かる気がする。

 楽しみだな。



 冬休みに入り、お正月が過ぎた頃。

「みんなで会うが…」

 杏子よ、怒んなや。

「なんであんたの引っ越しの手伝いなのよー!」

 予想外だった。

 雅深から全員連絡をもらって、てっきり遊びに行くと思っていたら、集合場所に全員揃うと「手伝って」と言われて、今に至る。

「良いじゃない、幼馴染み、で・しょ♪」

「可愛く言っても納得できっかー!」

 大暴れの杏子に、挑夢のぞむとつばめさんはクスクス笑う。

「笑うなー!」

「いや~面白くて~」

「面白いよ」

 とつばめさんは区切って、挑夢と見詰め合って、せーので。

「「ねー♪」」

 仲良いな。

「ほら叫んでないで運んでよ!」

「自分でやれし!」

 喧嘩をしながら運ぶ杏子と指示する雅深。

 ニコニコの挑夢とつばめさん。

「微笑ましいね」

「そうだな」

 俺と琴坂はこの中で大人だな。

「申し訳ございませんでした。まさか詳細をお話されてなかったなんて」

「大丈夫っすよ」

 田所さんは申し訳なさそうにして、肩身が狭く感じているようだ。

「早く終わらせて、皆様にはお詫びを」

「いいですいいです、マジで大丈夫なんで!」

 そんな気遣いはいらない。

 あの時と変わらない、この感じが良いんだから。

 それからみんなで、せっせと荷物を運び、雅深の指示に従って置いていった。



「お疲れ様ー!ありがとう♪」

「あんたが1番楽しやがって」

「みんなが早いからタイミングがなくて」

「嘘だ」

「嘘じゃないし」

「はいはい、そこまで~」

「いい加減にしろ」

「「だって!」」

 この4人は太くて強い丈夫な絆なんだなぁ。

 しみじみ思うと、隣にいたつばめが私の肩をポンと叩いた。

「羨ましい感じ?」

「うん」

「みぃ、可愛いー♪」

「こら!」

 からかわないでよ、つばめったら!

「さっ田所、車出して」

「かしこまりました」

 田所さんは素早く静かに出て行った。

「今からみんなでご飯食べよ?ちゃんと送るから」

「奢り?」

 杏子先輩はワクワクしていたが。

「割り勘だけど?」

 首を傾げてとぼける雅深さん。

「ここは奢れよー!」

 やれやれです。

 雅深さんのスマホからピピッと音が鳴った。

 画面を見てパッと明るくなる。

「みんな行こ」

 みんなでご飯を食べに行くことになった。


 とても楽しく騒がしいお食事会となったのは言うまでもない。

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