第46話
琴坂は本当に呼ばれるとは思っていなく、ある意味不意打ちをくらったようだ。
家族会議で雅深は本音を全部言ったそうだ。
お父さんは申し訳なかったと何度も謝ったそうだ。
彼女さんは泣いてしまい、出ていくと言ったが、そこは雅深自身が止めた。
暮らして数年を考えたら、もういいと言った。
誰かが出ていく所なんて2度と見たくない。
結婚したら文句は言わない。認める。
ただ、高校生活残り数ヶ月から、一人暮らしをお願いしたそうだ。
するとお父さんは了承した。
これから雅深の環境は少し変わることになった。
※
「ありがとう、琴坂さん」
「いえいえ」
居なくても…良かった気がする。
なんて、言えない。
「田所、車」
「かしこまりました」
ボディーガードとはいえ、執事の方が合ってるような。
駐車場から車が出てきた。
運転席から降り、後部座席のドアをスマートに開けた。
「どうぞ」
「じゃ、送るから乗って」
「は、はい!」
緊張しながら乗り込み、送って頂いた。
「ここで良いです」
家の前はさすがに恥ずかしいと思って手前で降りることにした。
「ありがとうございました」
そそくさと降りると。
「琴坂さん」
窓を開けた雅深さん。
「あとでみんなで会わない?」
「あっ、はい」
「また連絡するね。うるさいけど、楽しいと思うから」
「はい、分かりました」
今度の約束は
確かにうるさそうだけど、楽しいのは分かる気がする。
楽しみだな。
※
冬休みに入り、お正月が過ぎた頃。
「みんなで会うが…」
杏子よ、怒んなや。
「なんであんたの引っ越しの手伝いなのよー!」
予想外だった。
雅深から全員連絡をもらって、てっきり遊びに行くと思っていたら、集合場所に全員揃うと「手伝って」と言われて、今に至る。
「良いじゃない、幼馴染み、で・しょ♪」
「可愛く言っても納得できっかー!」
大暴れの杏子に、
「笑うなー!」
「いや~面白くて~」
「面白いよ」
とつばめさんは区切って、挑夢と見詰め合って、せーので。
「「ねー♪」」
仲良いな。
「ほら叫んでないで運んでよ!」
「自分でやれし!」
喧嘩をしながら運ぶ杏子と指示する雅深。
ニコニコの挑夢とつばめさん。
「微笑ましいね」
「そうだな」
俺と琴坂はこの中で大人だな。
「申し訳ございませんでした。まさか詳細をお話されてなかったなんて」
「大丈夫っすよ」
田所さんは申し訳なさそうにして、肩身が狭く感じているようだ。
「早く終わらせて、皆様にはお詫びを」
「いいですいいです、マジで大丈夫なんで!」
そんな気遣いはいらない。
あの時と変わらない、この感じが良いんだから。
それからみんなで、せっせと荷物を運び、雅深の指示に従って置いていった。
※
「お疲れ様ー!ありがとう♪」
「あんたが1番楽しやがって」
「みんなが早いからタイミングがなくて」
「嘘だ」
「嘘じゃないし」
「はいはい、そこまで~」
「いい加減にしろ」
「「だって!」」
この4人は太くて強い丈夫な絆なんだなぁ。
しみじみ思うと、隣にいたつばめが私の肩をポンと叩いた。
「羨ましい感じ?」
「うん」
「みぃ、可愛いー♪」
「こら!」
からかわないでよ、つばめったら!
「さっ田所、車出して」
「かしこまりました」
田所さんは素早く静かに出て行った。
「今からみんなでご飯食べよ?ちゃんと送るから」
「奢り?」
杏子先輩はワクワクしていたが。
「割り勘だけど?」
首を傾げてとぼける雅深さん。
「ここは奢れよー!」
やれやれです。
雅深さんのスマホからピピッと音が鳴った。
画面を見てパッと明るくなる。
「みんな行こ」
みんなでご飯を食べに行くことになった。
とても楽しく騒がしいお食事会となったのは言うまでもない。
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