回想 鶇雅深視点
小学校6年生の頃。
お母さんが突然居なくなって1ヶ月が経ったある日。
ポストに一通の封筒があった。お父さん宛て。
封筒の裏にはお母さんの名前が書かれていたため、勝手に開けて見た。
「これって…」
離婚届だけが入っていた。
帰って来たお父さんにどういうことか聞いたら、お母さんは蒸発したと言った。
理解出来なかった。
※
中学1年の春。
「はい、持ってなさい」
渡されたスマートフォン。
「明日から
突然のことだった。
次の日の朝。
家から出ると、若い20代前半の男の人がいた。
「おはようございます、雅深様」
もしかして、この人って…。
「私の、ボディーガード?」
「はい、
いつまで着いて来るのか分からないけど、気にしないようにした。
だんだん慣れてくると、ちょっとずつ相談するようになって、いつの間にか私の中で彼は頼れるお兄さんになっていた。
※
「それはいけません!」
「ほっといて!」
田所の気持ちなんか知らない。
私はイライラしてるんだから。
だって、だって…。
お父さん、いつできたのか分からない彼女を連れて、暮らすと言い出した。
お母さんと別れて1年後のことだった。
私は嫌だった。
お母さんの部屋にあの人がいる。
お母さんがいた台所にあの人がいる。
お母さんが使っていた物を使う。
他にもたくさん嫌と思った。
でも、1番嫌だったのが夜だった。
見ていないのに、怖くて気配を感じたくなくて。
耳をふさいで、目を瞑っても、身体は震えて、眠れなかった。
だから私はSNSで大学生の人をターゲットに遊ぶようになった。
嘘をついたもっと年上の人とは、そういう関係にならないように上手くかわしてご飯だけの付き合いにした。
なるべく家に帰らないように。
お父さん達は私の事なんか心配していなかった。
心配してくれたのは、田所だけだった。
※
いろんな人と交流した。
でもみんな1度きり。
知っていた。
1度きりだったから、どこかで安心はしていた。
そして、止めようと思った。でも、出来なかった。
だから私は止めるために、
初めは幸せだった。楽しかった。
でも、だんだんと淋しさが顔を出してきて、どうすることも出来なくて、また年上のお兄さんに甘えてしまった。
それを雅ちゃんに見られて、傷付けてしまった。
“幼馴染み”という“特別な絆”が壊れた瞬間だった。
※
私は、また雅ちゃん達に会いたくて、文化祭に行った。
すると、雅ちゃんには彼女のような女の子がいた。
私は嫌だ、と思ってしまった。
この人は私のよ!と言っている自分がいて、勝手に怒っていた。
これが嫉妬なんだ、と初めて知った。
私はあの場から去った後、雅ちゃんと復縁したいと強く思って、計画を立てた。
SNSで偶然、
雅ちゃんといた女の子の連絡先を知る人を探して、やっと見付けて教えてもらった。
それを原田君に教えて、そこから計画をスタートさせた。
そして、今。
経緯を語っている。
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