小話 その5

「嘘ついて良かったんか?」

「幼馴染み、水入らずって思ったから」

さとちゃん、気遣いー!」


 里ちゃんと磯辺いそべ君と私は歩いていた。


「あとで話を聞けば良いんだし」

「それもそうか」


 こうして、他校の人と仲良くなることを私は予想していなかった。

 夢のために通信制に通っているとはいえ、夜型の私には日中の世界は眩しく見えていた。

 みぃと親友だから、新しい友達に恵まれたのかも。

 感謝しかないな。


「ね?みんなで今からカラオケ行かない?」


 突然の提案をした里ちゃん。


「俺は良いけど、つばめちゃんは?」

「私も良いの?良いの?」

「良いに決まってんじゃん!」


 ということで、3人でカラオケに行くこととなった。


「たくさん歌うぜー!」


 はりきる里ちゃん。


「俺もー!」


 つられる磯辺君。


「やふーい!」


 楽しくなってきた。



 あんな目に合うなんて…。

 疲れたよ…。

 雅深まさみとは夢のような時間だったな。

 みやびとは青春って感じだったし。

 これで僕は、また普通の高校生となる。

 キラキラしていたサッカー少年はとっくに消えているからね。

 はぁ…立ち直れない。


「うわっ!」

「わっ!」


 前を見ていなかったから、人とぶつかってしまった。


「すみません、ボーッとしてました」

「私の方こそ、お怪我は?」


 大学生だろうか。


「僕は大丈夫です、それよりもお姉さんは?」

「お、お、お姉さんだなんて!」


 顔を真っ赤にして慌てるお姉さん。


「大丈夫です大丈夫です!はい!」


 大丈夫なら、いいか。


「それじゃあ、失礼します」


 不思議な人だったなぁ…。

 また、とぼとぼと歩き始めると。


「あの!」


 と、後ろから呼び止められた。


「元気…ないですよね?」

「えっ」


 そんなに自分は、暗く見えていたようだ。


「私で良ければ…お話聞きますが…?」

「えっ?」

「あー、ごめんなさい!気になるとお節介したくなるんで!」


 お姉さん…。


「知らない人になんか、ダメですね!本当にごめんなさい!さよなっ…」

「あの!」


 自然と動いていた。


「話を、聞いてくれますか?」


 小柄なお姉さんは驚いた顔になって、それから直ぐに優しい顔に。


「はい、お役に立てるなら」


 僕とお姉さんは、喫茶店に行くことにした。

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