第42話

「何でだよ!」


 怒ってる…物凄く怒ってる…。

 怖い…とても怖い…。

 後退りして原田はらだ君から距離を取る。


「何で僕の考える事からズレるんだよ!あんなに優しくしたのに!」

「そんなこと…言われても…」


 訳が分からない。

 優しくされたって、気持ちは変わらない。


「あー、イライラする!」


 髪をぐしゃぐしゃにして、原田君はどんどんおかしくなる。

 じりじりと原田君は私に近づいている。

 逃げなきゃ…ここから出なきゃ…。


「原田君…もう帰った方が…」


 帰って、お願い。と思ったら。


「バカにすんな!」

「きゃっ!」


 原田君は私を押し倒した。

 両手首をしっかり掴んで身体を押さえ付けられてしまい、身動きが取れない。


「なに、するの…?」


 涙が流れる。

 助けて…みんな…。


「力強くで分からせる」

「嫌だ…離して!」

「離さない!」


 ジタバタしてもビクともしない。

 これが男の人の力なのか。

 どうしよう…怖いよ…。

 なんでみんな来ないの?

 助けて…助けて…早く…はや、く…!


「もう遅いから」


 ダメ…もう…終わる…。

 ギュッと目を瞑り、悔しさ悲しさの中、ある人を思った。

 助けて…雅虎まさとら君!


 バタン!


 部屋のドアが勢い良く開いた。

 そこにいたのはー…。


「何やってんだよ…」


 嘘…なんで…。


「何故君が…」


 原田君も驚いている。


「ぁっ…ぅっ…」


 彼を見たら安心してしまい、涙が溢れた。



 降りるバス停に5分短縮で着いた。

 乗る人降りる人が全くいなかったから。

 ラッキーとしか言いようがない。

 降りて直ぐに走った。

 早く着くために。

 どうなってんのか知らんが、玄関は開いているって言っていたし、2階奥って言っていたから、靴を適当に脱いで掛け上がれば。

 なんて考えながら走っていると着いた。

 あとは入るだけ。

 と思いきや。


まさちゃん」

「!?」


 なんで居るんだよ。


雅深まさみ…」


 巻いたと思ったが、先回りされては敵わん。


「行かないで」

「どけ」


 無理矢理どかしたいが、怪我をされては困るし。


「そんなにあの子が大事なの?」


 そりゃあな。


「あぁ…とっても大事だ」


 ハッキリと言った。


「私と会ってても、やり取りしても…雅ちゃんは時々上の空だったもんね」


 分かってんじゃん。


「だったら諦めろ。さっさとどけ」

「嫌」

「わがまま言うな」

「嫌なものは嫌!」


 困ったな、しゃーない。


「悪い」

「なっ!やっ!」


 暴れる雅深をなんとか退かして、俺は玄関に。

 すると雅深は俺の服を掴んで離さない。


「行かないで!お願い!」

「離せ雅深!危ないってば!」


 服を掴む雅深の手を離させようとしたその時。


とらちゃんに女々しくしてんじゃないよー!」

杏子きょうこ!?」


 物凄い剣幕で走って来た杏子が雅深の身体に抱き付いて、俺から離した。


「何で邪魔すんのよ杏子!」

「うっさいわー!虎ちゃん早く入れ!こっちはあたしが何とかすっから!」

「ありがとな杏子!」


 あとはマジで任せた。

 俺は家の中に入った。



 そして、今に至る。

 雅深とグルの原田?だっけ。

 爽やかが、ただのクズじゃねーか。

 こんなやつに、彼女が騙されてたと思うと、俺が全部悪いんだよな。


「とりあえず、原田っていうだよな?琴坂ことさかから離れろ」

「雅虎君…」


 心がボロボロじゃん…解決したら全力で謝ろう。


「無理だね」

「はぁ?」


 おいおい、人質ごっことかする気なのか?

 だったら、コイツは女じゃないし、大丈夫だな。


「しゃーないな」


 俺は2人に近づく。


「近づくな!どうなっても…」


 君は犬か?キャンキャンキャンキャン…。


「うるせーなー」


 原田の力はひ弱だった。

 俺は後ろに回って、彼の両腕を掴んでグッと力を入れて持ち上げたら、パッと琴坂を掴んでいた手は離れた。

 そのまま俺は彼を横に投げつけた。


「いった…」


 痛みに悶絶する原田。

 君は鍛えた方が良いぞ?


「大丈夫か?」


 琴坂を起こした。


「ありがとう…」


 服の乱れはない、間に合ったっちゃ間に合ったのか。


「ごめんな…」

「ううん」


 一瞬だけ2人の世界に入りかけたが、俺は気を取り直す。


「原田…」

「クソ…クソ…!」


 ある意味コイツも被害者なのかもしれないな。

 能天気な考えだろうか。


「雅深に…どんな顔をすれば…」


 原田はゆっくりと上体を起こす。


「その雅深、今外にいるけど?」

「なんだって…」


 連携してなかったんかい。


「一緒に行くか?」

「…」


 俺は原田と一緒に外に出ることにした。

 もちろん、琴坂も着いて来た。

 あれ?ところで、挑夢のぞむ達は?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る