第41話

 勉強はスムーズに流れた。

 30分経過したから、一旦休憩にしようかな。


原田はらだ君」

「ん!?」


 ビクッと反応した原田君。

 そんなにびっくりしないでよ。


「少し休憩しない?」

「あっ…あぁ、そうだねー」


 変な原田君。


「新しく飲み物持ってくるね」

「行ってらっしゃい」


 私は部屋を出てリビングに行った。



 タイミングが掴めない。

 分からない所を聞いてくるかなと思ったのに、全く気配すらない。

 黙々と解いている。

 正直に言って可愛げがない。

 雅深まさみならわざと僕に聞く。

 本当に経験値低いんだなみやびは。

 チャンスがきたら必ずー…。



 自室の前にお兄ちゃんの部屋にまた寄る。


「はい、これ」

「ありがとう雅」


 さとちゃんに新しく持ってきた飲み物とお菓子を渡す。


「じゃ!」


 静かに閉めて自室に戻った。

 原田君の向かいに座る。


「はい、どうぞ」

「ありがとう」


 オレンジジュースにしてみた。

 りんごの方が良かったかな。


「ねぇ雅?」

「なに?」


 原田君は真剣な顔で私を見る。

 なんだ、どうしたのかな?

 ちょっとだけ不安になる。


「突然でごめんだけど…」


 耳を塞ぎたい所を我慢する。


「僕のこと、どう思ってるの?」


 どう思ってるの?

 と、言われても。


「小学校の時の…同級生…」


 それ以上もそれ以下もない。

 私の中では原田君の位置はさっき言った言葉で収まる。

 原田君の事を見てみると、俯いていた。

 表情は分からない。

 ただ、彼が放つ雰囲気は少し怖い。

 もしかすると、この数ヶ月で何かあったのか。

 それか、あの人に何か吹き込まれたのか。

 どちらにしても、彼が思い描いた通りの感情はない。


「あの…原田君?」


 恐る恐る話しかけた。

 すると、原田君はガバッと顔を上げた。

 表情は怒りに満ちていた。


「何でだよ!」


 いきなり怒鳴られて、少しだけ後ろに下がった。



「「「「!?」」」」

『ついに!?』

『大丈夫か!?』


 全員、原田君の怒鳴り声で驚いた。


「きたね~」


 直ぐに冷静になって2人の様子を見る。

 ここからどうなるのかー…。

 ところでまだかな?

 僕の見立てではそろそろなんだけど。


挑夢のぞむ君、行こう!」

「挑夢、行こうぜ!ヤバいぞ!」


 里ちゃんと拓郎たくろうは突入しようと言う。

 でも僕はそれを止める。


「まだダメ」

「「なんで!?」」


 それは、ねぇ…。


『のぞむぅ…まさか!』


 さすが杏子きょうこちゃんだ。

 幼馴染みだからこその、以心伝心かな。


「杏子ちゃん、金戸かねと先輩、ここに来てもらっても?」

『もちろんよ!アイツにビンタすんだから!』

『良いよ!丁度勉強飽きたし』

『マッハで行くから!』

「了解~♪」


 ブツン、と杏子ちゃんの方でリモートが切れた。

 善は急げ、動くが先な杏子ちゃんらしい。

 走って来るとなると…大丈夫かな金戸先輩。

 あの人確かー…。


「のんちゃんのんちゃん!」


 つばめちゃんが僕に声をかけてきた。


「ん?」

「みぃー!」

「!?」


 目を離したらマズいことに。


「行かなきゃ!」

「ダメ、大丈夫だから」

「でも!」


 バタン!


「あっ…」


 全員固まった。


『何やってんだよ…』

『何故君が…』

『ぁっ…ぅっ…』


 雅虎まさとら…遅いよ…。

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