小話 その4

 当日の午前9時過ぎ。


「「「「お邪魔します」」」」

「はい、上がって上がって!」


 お父さんは先に家を出て職場へ。

 お母さんはまだいたために、みんなを出迎えた。


「お母さんは準備しなきゃでしょ!」

「良いのよ!こんなにお友達連れてきて嬉しいんだから!」


 お母さんは自分の事よりも、みんなをもてなす方が楽しいみたい。


「今、お菓子と飲み物持ってくからね♪」

「んもお、いいから!」

みやびちゃんそんな事言わないでよー!」


 お母さんの背中を押してリビングへ。

 とその前に。


「みんな、2階の奥に!つばめ案内お願い!」

「あいあいさー!」


 みんなはつばめの後ろをついて行った。

 そして私はリビングに。


「お母さん、早く準備して行って!」

「はいはい♪」


 ルンルンしないでよ。

 私は飲み物のお茶とお菓子をお盆に乗せていると。


「雅?」

「なに?」

「良いお友達ね♪」


 ふふ、と笑って出掛ける支度を始めたお母さんだった。

 安心、したのかな。

 心配ばっかりでごめんなさい。



 お母さんが出掛けた事を確認して。


「改めて、最終打ち合わせー!」


 さとちゃんの合図で最終打ち合わせを始めた。


「先輩方、聞こえますか~?」

『『大丈夫』』


 受験生でもある杏子きょうこ先輩と金戸かねと先輩は、杏子先輩の家からリモートで参加。

 勉強しながら見守るとの事。

 一方のつばめ、のんちゃん、磯辺いそべ君、里ちゃんは私の家に。


「10時にアイツが来るんでしょ?」


 里ちゃんは確認で私に聞いてきた。


「うん、そうだよ」


 10時に原田はらだ君は来る。


「てことは、その前にどこかに隠れなきゃだねー」


 と、笑っているつばめ。

 変なことしないでよ。


「大丈夫、隣の部屋を片付けたから、そこに移動してね」

「誰の部屋なの~?」


 と、のんちゃん。


「お兄ちゃんの部屋。許可はもらってるから大丈夫!」


 そう、年の離れた兄がいる。

 お兄ちゃんは社会人、バリバリ働いている。

 最近婚約者を連れてきた。近々結婚するらしい。


「知らなかった!」


 と、磯辺君。

 聞かれてないから話してないだけ。

 聞かれたら答えるよ。


「お兄さんの部屋で私らは見守る、だよね?」

「うん、モニタリングだね~」


 そう、隠しカメラを私の部屋に3台、リビングに2台設置。

 もちろん親の許可はもらっている。

 私の親、ある意味許容範囲が広いことを知る。

 このカメラを設置したのが、つばめとのんちゃん。

 本当にどこから。


「危ないと思ったら、合図出して。もちろん私らも突撃するかもだし!」

「了解」


 突撃は、止めて。

 合図かぁ…。


「どんな合図が良いかな?」


 と考えていると。


「やだ、止めて、で良いんじゃない?」


 のんちゃんがシンプルな提案をした。


「手を上に動かしたら怪しまれるから、言葉がベストかと~」


 さすが、のんちゃん。


『それじゃあ、移動して待機したら?』

『早めに来るっていう点、拭えないからね』


 先輩2人の言うことを聞いて、みんな隣のお兄ちゃんの部屋に移動した。


「広い!」


 そう兄の部屋は広い。私の部屋よりも。

 あー、お兄ちゃんの部屋に移動したい。

 私の部屋、狭いもん、なんでよ、妹だからか!

 長男の特権か!悔しい!


「本棚に本びっしり~」


 兄妹揃って本好きなんで。


「なんかあったりなんかしちゃったりしてー!」

「面白そう!」


 つばめと里ちゃんは盛り上がる。


「何にもないってば!」


 何か見つかれば私、処分するし!

 て、怒られるか。えへっ♪


「ここ防音だから、普通の会話レベルなら聞こえないから安心してね」


 ギターとピアノを習っていたからここで練習していた部屋なわけです。

 妹のわがまま、聞いてほしい、とほほ。


「とりあえず、あと10分…あっ、みんなの靴片付けとかなきゃ!」

「「「お願いしまーす」」」


 はぁ…直前になると、何でバタバタするのかな?

 不思議だな。


「じゃ、また!」

「「「「はーい」」」」


 私は玄関に向かい、全員の靴を、靴箱に入れた。

 そして身の回りの確認。

 あとは大丈夫、深呼吸。


 ピンポーン


 丁度良いタイミングでインターホンが鳴ったのだった。

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