第39話
俺は
「綺麗だね」
「だな」
コートは茶色で、白のタートルネック、ふんわりした淡いピンクのスカート。
なんか俺、落とされるんじゃないのかな。
ちょっとだけ引く。
「こうして2人で出歩くと、パッと見、恋人同士だよね」
確かに。
雅深は自然な感じで手を繋いできた。
「良い?」
上目遣いで聞いてくる。
「別に」
ふてくされるように言いつつ、勝手にしろと思いながら他の事を考える。
本当は、お前じゃなく、あの子なんだけどな…。
こういう所だって、一緒に行くなら…。
「
「おわっ!」
ズイッと雅深の顔が目の前に。
「他の子を考えないで…私だけを見て?」
潤んだ瞳にやられそうで、逸らした。
「わ、分かったよ…」
俺は言う通りにした。
ポケットが震えている。スマホだろう。
「悪い」
俺は雅深から手を離してスマホを見た。
着信は
「どうしたの?」
俺の様子を伺う雅深。
「ちょっとトイレ」
「えっ」
なとなく、雅深に見られてはいけないと思って、トイレに向かった。
「なんだよ」
俺は手洗い場の前でメッセージを見た。
「…」
絶句した。
これってー…。
『挑夢、なんだよこれ!』
『やぁウッキー久しぶり♪』
『ふざけんな!』
『ごめんごめん』
イライラする。
『僕は事実を伝えただけだよ?』
『さぁどうするの?というか…』
『どっちの女の子が好きなの?』
この言葉に、俺はー…。
※
急いで雅深の元に戻る。
「雅深」
「雅ちゃん遅いよ?次行こ、つ…」
「帰る」
「えっ」
どうして?何を言ってんの?と、圧がきた。
俺は怯まない。
「んじゃ、そういうことだから」
そう言って、俺は走った。
「ま、待って!」
追っかけて来る雅深から離れなければ。巻かないと。
水族館を後にして、丁度来たバスに乗り込み、「時間でしょ?早く!」と運転手を急かさせて発進してもらった。
席に座り深呼吸した。
バスだと30分…大丈夫だろうか?
不安な気持ちでバスに揺れながら、また挑夢とやり取りを始めた。
文字で酔うのに、この時は酔うことはなかった。
※
なんで…なんでよ!
きっと挑夢ちゃん辺りが…油断してた。
怒りが湧いてくる。どうすることも出来ない。
早くしないと…我慢出来ない。
私はタクシーを掴まえて乗り込み場所を伝えた。
先回りしてやる。
絶対に会わせない。
※
「お邪魔します」
「今お茶とお菓子持ってくから先に部屋に行って。2階の奥が私の部屋だから」
「良いよ、手伝うよ」
ヤバい、んだよね。
「良いから良いから!」
強く言うと「分かった」と言って彼は2階に上って行った。
「ふぅ…」
私はリビングに行き、用意していたあったかいお茶とお菓子をお盆に置いて、自室へ。
その前に、物置きになりつつあるお兄ちゃんの部屋に寄る。
「みんな、大丈夫かな?」
のんちゃん、つばめ、
リモートで
声を出さないで、各々頷き親指を立てて私に伝えた。
「じゃ、また」
そっとドアを閉めてから、ようやく自室に到着した。
「持とうか?」
「ううん、大丈夫大丈夫」
対面で座り、お盆の上にあるお茶を原田君の所に置く。
「はい、お茶どうぞ」
「ありがとう」
自分の所にもお茶を置いて一息。
真ん中にお菓子を置いた。
「それじゃ始めよっか」
勉強会が始まった。
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