第17話

「相変わらずだったね~杏子きょうこちゃん」

「珍獣すぎる」

「え~そうかなぁ?」


 首を傾げる挑夢のぞむ


「ねぇオフレコなんだけどさ」

「何だよ?」


 挑夢は俺の耳元でこんな情報をくれた。


「杏子ちゃんと会長の金戸かねと先輩、恋人同士らしいよ」

「マジか」


 知らなかった。

 まっ、距離を取っていたから尚更か。


「うん、僕の情報は真実しか置いてないんでね~」


 杏子もとっくに春が来てたんかい。


「情報料」

「勝手にバラしたのお前だろ」

「お汁粉くらい良いじゃ~ん」


 ねだる挑夢。なんてこった。


「放課後な」

「わぁ~い♪」


 缶のお汁粉で喜んでくれる君が可愛い。


「あっ、雅虎まさとら君!」


 手を振りながら駆け寄る琴坂ことさか

 俺になんかあんのか、なんて思っていると、耳を疑うワードが聞こえてきた。


!」

「ん?」


 すると、隣からも耳を疑うワードが。


「あ~、!」

「はぁ?」


 えっ、この、2人、えっ?

 混乱する中で、なんとか平静を装う。


「なんで琴坂のことあだ名で?」


 すると、忘れてたと言わんばかりに、挑夢は丁寧に説明を始めた。


「あ~、と話してて、僕も琴坂さんのことあだ名で呼んでも良いのかな?て言ったら、つばめちゃんを通してOKくれたんだ~」


 つばめさんと更に仲良くなって“ちゃん”付けになっとるし。


「そうなんだ」


 棒読みで相槌。


「早く雅虎も呼んであげなきゃ名前」

「分かってるって」


 緊張するんだよ、まだ無理だ。


とらちゃーん!」


 あれ、杏子!?

 走って来てるし、お前がお手本にならなきゃいけないのに、廊下走るなよ!


「はい、追い付いたー!」

「また会ったね~杏子ちゃん」

「だね~のぞむぅ♪」


 息切れしてないとか、運動スキルヤバい。

 と思っていると、俺の後ろにいつの間にか隠れている琴坂。

 しかも制服の上着をキュッと摘まんでいる。

 や、止めて~、ドキドキするから。


「あら?もしかしてこの子?」


 琴坂がビクッと体が揺れたのが分かった。


「あたし、森枝もりえだ杏子!」

「あっ…副会長、さん」

「そうそう♪」


 このニコニコ、悪巧みにしか見えない。


「杏子、ぐいぐい来るな。怖がってんぞ」

「そんなことないしー!」


 マジだし、全く。


「えっと、呼び捨て…」


 琴坂は不安な表情に。


「大丈夫だよみぃちゃん」


 挑夢、フォローしてくれ!


「僕と雅虎と杏子ちゃん、幼馴染みなんだ~。だからタメ口~」


 すると琴坂は安心したのか胸を撫で下ろしている。


「そうなんだ」

「びっくりしちゃったね~」

「うん」


 俺なら慌てて言うと思うから、挑夢に感謝。


「そんで何しに来た?」

「これ、未記入の所」

「あっ…すまん今書く」


 胸ポケットからペンを出し、ササッと書いた。


「はい、OK!」

「さっさと戻れ」

「はいはい。じゃあねのぞむぅに琴坂さん♪」

「ばいば~い」

「はい、また」


 杏子はまた、ピューンと来た道を通って戻って行った。


「嵐のような人なんだね」

「それが杏子」

「面白い人だよ~」


 3人で杏子のことを考えたのだった。

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