小話 その2

「まっさかね~」


 会長椅子に座ってくるくる回りながら寛いでいる。


「春ですね~」


 お姉さんは嬉しいよ。

 あと、のぞむぅのことを“挑夢のぞむ”って、学校で呼べるようになったのね。


「うん、成長と克服だな」


 鼻歌を口ずさみご機嫌良くしていると、ドアが開いた。


「なんだ、居たんだ」

金戸かねと君、やほー♪」


 会長の金戸 武蔵むさしがやって来た。

 スラッと長身の眼鏡の似合う爽やかイケメン。


「機嫌が良いな、どうした?」

「ん?可愛い弟分に春が来てさ、あたしは嬉しく思ってね」

「ほほぉ。はい、どけ」

「いえっさー!」


 会長椅子から立ち、2番目に良い椅子の副会長椅子に腰をおろす。

 この椅子、回転しないし固いから嫌なんだよな。

 ふかふかの会長椅子が良いのに。


「やっぱり、会長椅子が良い」

「わがまま言うな」

「はーい」


 諦めますか。


「この書類は?」

「変更点があったんだって。だから提出」

「うん、なるほど」


 金戸君は書類に目を通して。


「これなら大丈夫だな」


 そう言って机の引き出しから判子と朱肉を出して、ポンと押した。


「おにぎりかぁ…面白いな」

「へぇー」

「ちゃんと見てくれ」


 書類を読むの苦手だもん。


「ところで杏子きょうこ

「ちょっと、学校では森枝もりえだって呼んでよ!」

「良いじゃないか、2人きりだぞ?」

「誰か来たら」

「あー、来ない来ない。みんな文化祭準備に没頭しているから」


 むぅ…乙女の気持ちを考えなさいよ。


「3ヶ月ぶりの2人きりなんだから、さ」

「武蔵君…ばか」

「あは、はいはい」


 なんなのよもう!


「ん?これ未記入があるなぁ…ちょっと行って来てくれないか?」

「えー、パシり!?」

「頼む」


 待てよ、これって…チャンス!


「分かった、あたし行って来るー!」

「行ってらっしゃい」


 あたしは生徒会室を出て、弟分のクラスへ向かった。

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