第16話

「ねぇウッキー?」

「猿じゃないっての」


 俺は挑夢のぞむと一緒にとある所へ向かっていた。


「何で僕は付き添いしなきゃいけないの?」

「それは分かってんだろ?」

「まぁね~」


 そう、唯一知っているからこそ、居て欲しいわけだ。


「着いた」

「んじゃノック」


 ドアをコンコンッとノックした。


「はーい、どうぞー!」


 中から声が聞こえたため、ドアを開けた。


「「失礼します」」

「なんだ、お前か」

「なんだとはなんだ」


 森枝もりえだ杏子きょうこ

 この人のスカートは何故かくるぶし辺りまで長い。

 だが、身長が170センチとスラッとしているため、なんだかカッコ良く見える。

 彼女にはファンがいて、特に女子に人気である。

 ほんのり茶色の髪をポニーテールにして、風紀活動の時は竹刀を持って校内をうろつく。

 まさに強権政治。


「何か言った?」

「いいえ」


 うむ、危ない危ない。


「そんで、何しに来たの?」

「変更点があったから書類提出」

「僕は付き添い~」

「のぞむぅは良いの、とらちゃんがさ」

「はぁ…止めろその呼び方」

「まぁ良いや、来たんだしそこら辺に座って。茶くらい出す」

「お構い無く~」

「のぞむぅにはお菓子つけるね」

「ありがと~♪」


 嬉しそうな笑顔になる挑夢。


「俺は?」

「喉だけ潤しとけ」

「俺に対する対応がヤバい」

「当たり前でーす」


 ここにいる3人の関係は幼馴染み。

 だからタメ口でも大丈夫。

 杏子は1つ上で3年生である。

 そしてここは生徒会室。

 そんで副会長が杏子なのだ。

 棚には報告書のファイルが並べ置かれている。

 流し台があるから、ポットと食器棚が完備されてある。


「へいおまちぃ!」

「ありがとう、杏子ちゃん」

「良いのよのぞむぅ!」

「ありがとさん」

「上から目線反対、私先輩」

「はぁ?幼馴染みに上下関係ないだろ」

「敬え敬えー!」

「へいへい」


 こんな感じで会話する。


「はっ、そうだそうだ!」


 杏子は会長椅子であろう、ふかふかの皮椅子に腰掛けた所で、何かを思い出したようだ。


「虎ちゃん、あんた孤高のあの子と付き合ってんの?」

「んぐっ!?…ゲホッゲホッ」


 噎せた。


雅虎まさとら、大丈夫?」


 挑夢は俺の背中を擦ってくれた。


「ごめんごめん」


 平謝りする杏子。


「ヤバかった…」


 変なとこに入ったらマズいぞ。

 死ぬかと思った。


「はい気を取り直して!孤高の美少女とは?」

「なんもねーよ!」


 本当に何もないため怒った。

 まさか校内中に噂になってんじゃ。


「えー、つまんなーい!」


 足をパタパタして、ガッカリする杏子。


「バカなの?」

「ちくしょー、新ネタあったら言いふらす予定だったのにぃ…」

「アホ、そんなことしたら琴坂ことさか不登校になるから止めろ」


 心を開いてきてんだから、振り出しに戻すようなことをしないで頂きたい。


「名字呼びかー…んなら何もないかー」


 だから、ないっての。


「いつかは名前呼んであげんの?」

「ん?まぁ…」


 いつかはな、いつかは。

 名前を呼んだら、吐血する自信はある。


「ふぅーん」


 ジト目で俺を見る杏子。

 しばらく、睨まれて(?)から。


「奥手だから、一生呼ばないよね?」

「僕もそう思う!」

「だよねだよね!」


 2人して失礼な。

 お茶を飲み干した頃に生徒会室を後にした。

 

 生徒会室を出る前にこんな会話があった。


「あとで孤高の美少女、連れて来いよ!」

「絶対会わせねーからな!」


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