第15話

「なぁ宮司みやじ?」

「何、宇城うき君?」


 俺は疑問をぶつける。


「喫茶店、やりたいんだよな?」

「うん」

「でも、おにぎりがメインだよな?」

「あっ」


 あの時、人の話をちゃんと聞けば良かった。

 無関心、恐ろしい。


「今からでも間に合う、おにぎり専門店にしよう」


 それしかない。


「でも…」


 宮司は渋る。

 なに、まだなんかあんの?


「接客組の服がさぁ…」


 服がどうした?


「ちょっと来て」


 てなわけで、俺は宮司の後をついて行った。



「これなんだけどさ」

「あぁ…」


 とんがり帽子と魔女の服、浦島太郎風の服、桃太郎風の服、執事、メイド、ゴスロリ、ウサギ、クマ、サル…。

 これは、コスプレ?


「みんな、これ着たいんだ」


 はぁ…なんという。


「困ったな」


 俺は頭を抱えた。


「もう変更出来ない」


 変更出来ない、じゃなく、変更“したくない”だろう。


「あべこべが良いんだろう?」

「うん、そうだね」

「だから良いんじゃね?」

「ん?あっ!」


 急に元気になる宮司。

 なんか暴走しそう、止めてと思いつつ。


「看板はおにぎり専門店。店名は…」


 かけれるな。

 ちょうどポケットにあったメモ帳とシャーペンでサラッと書いて、宮司に見せた。


「仮装と仮想で、そう」

「華やかだからか!なるほどねー良いかも♪帰りのホームルームでみんなに聞こう!」


 その後、帰りのホームルームでみんなに聞いてみると、直ぐ承諾された。

 あー、良かった良かった。



 “おにぎり専門店・華そう”。

 看板に書かれた。

 習字を習っていた女子生徒の筆は素晴らしく、息をのむほどの魅力的な文字となった。

 これであとは本番へ向けての準備を進めていく。


「どんどん文化祭って感じになってきたね」

「あぁ、賑やかだよな」


 少しだけ心の扉を開いたら、琴坂ことさかの周りには女子が集まるようになった。

 あの決め事の時がきっかけで、質問攻めされたそうだ。

 そして俺もまた質問攻めをくらいヘトヘトになった。

 なにはともあれ、クラスに溶け込んだことが大きな一歩。

 少しずつ、歩み寄れればグッジョブ。

 俺は見守るのみ。


「琴坂は何を着る予定なんだ?」

「ふにゃっ!」


 可愛い声を発した琴坂。


「ひ、秘密!」


 秘密、だと?

 気になる。


「ヒントは?」

「だぁーめ」


 マジかよ…。


「楽しみにしてるか」

「うん、そうして!」


 似合うのはー…何でも似合うな。

 楽しみが増えて俺は幸せだ。

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