第13話

「そんなこと忘れてたわ」

「興味持った方が良いぞ!」


 今日は磯辺いそべと昼休みを過ごしていた。

 寒くなってきたから、空き教室でご飯を食べている。


「非日常になる日…それが文化祭だろう!」


 あー、ダメだ。


「お前はもしやサボる気だな?」

「うん」

「うぉい!ナメとんのか!」


 いきなり怒られたんだが。


「可愛い女子と1日中過ごせる確率の高いイベントをどぶに捨てる気だろう!」

「お前はただ、その日にたくさん女子にナンパすんだろ?」

「ぎくっ!」


 コイツ、マジでアホバカ。


雅虎まさとらはどうなんだよ?」

「ん?なんのこっちゃ?」


 とぼけてみた。


琴坂ことさかさんが居るだろうがよ!」


 変なセンサーしてんな磯辺の探知機。

 末恐ろしい。


「2学期に入ってから、学年の中で雰囲気がガラリと変わったし、よく見ると可愛いって他の男子が気づき始めてるしなー」

「マジかよ?」

「んぁ?」

「それ、マジかって聞いてんの」


 他の野郎共が、琴坂を?

 心の底から、怒りのマグマがふつふつと湧き出そうになる。

 血圧が上がっていることが分かる。


「マジだけど?どした?」


 磯辺…磯辺…。


「そんなら、その野郎共をボコらんと」

「えっ?」

「絶対近づけさせない。指一本触れさせないからな…」


 ぶつぶつと呟くと、磯辺は吹き出した。


「ガハハ!おいおい、あはは!」


 お腹を抱えて笑う磯辺。腹立つ。


「ははっ、はっ…そういうことかー…あはは!」


 笑いが止まらない磯辺。


「付き合ってんだ」

「いや、違う」


 告白だってまだだ。


「意味が」

「すまん、まだだ」

「おいおい」


 あり得ないと訴える磯辺の視線が痛い。

 止めろ、ダメージがヤバい。


「とりあえずさ」


 俺の肩をポンと叩いた磯辺。

 ニヤーと笑いながら。


「早く告った方が良いことをススメる」

「はい」


 こんな肉食獣に言われるなんて、悔しくなった。



「文化祭、どうする?」

「どうって?」

「まさかサボるんじゃ!」

「まあ、うん」

「ダメだよ!許さない!」


 琴坂に文化祭をサボることを反対された今。

 一緒に下校している。


「つばめ来るって言ってたから、おもてなししないと」

「なるほどな」


 俺には他校の友達なんていない。

 寂しいかな。


「去年はどうしてたんだ?」

「あー…うー…」


 あれ?言葉に詰まってる。


「もしかして…琴坂…」

「あっ朝はいたよ!お昼前には帰りました…」


 シュンとなった琴坂。


「俺はサボったけどな、お互い様だな」

「完全に行ってない雅虎君と同じにしないで!」


 ぷりぷりしないで、怒んないで!


「雅虎君、絶対サボるのなしだからね!分かった?」


 背伸びをして俺に迫ってきた琴坂。

 うん、怒った顔も可愛いー…じゃなくて。


「は、はい!」


 彼女の言うことを聞こう。

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