第11話

 公園を出て、途中まで琴坂ことさかを送る。

 初めての頃よりも、今はだいぶ表情が柔らかい。

 そう考えると、最初の頃、どんだけ嫌われていたんだよ。


「ここでいいよ」


 十字路の所で止まった。


「左に曲がれば直ぐそこだから」

「なるほど、分かった」


 俺は右に曲がって更に真っ直ぐ。

 遠いな、なんて思う今。


「今日はありがとう」

「こちらこそ。つばめさんに宜しく言ってくれ」

「うん。ぽちゃお君…じゃなくて、挑夢のぞむ君に宜しく伝えてね」


 互いの親友に気を遣う。変なの。


「んじゃな」

「うん、明日ね」


 そう、明日は学校だから。



 久々の朝一。

 緊張しながらドアを開けると、いた。

 相変わらず、勉学に励んでんな。


「おはよう」


 俺から言った。

 すると、琴坂は顔を上げて俺の方を見て。


「おはよう、君」


 ドキッ…。


「私、変な事言った?」

「いや、違う」


 違う、全然違う。

 高鳴る心を押さえ付ける。

 落ち着け、落ち着いてくれ。

 昨日、気付いた事を聞いてみる。


「なぁ?タメ口、だな?」

「あっ…」


 琴坂はおろおろし出す。


「まだ…だ、ダメだった?」


 俺は首を横に振る。


「そんなことない」


 ちゃんと、言おう。


「嬉しいよ」

「よ、良かったぁ…」


 ホッとする琴坂。

 本当に友達になったんだな。


「名前呼びも嬉しい、ありがとう」

「!?」


 さらにおろおろして、真っ赤な顔になる琴坂。


「あ、あ、あの!」


 おっ、どうした?

 はぁはぁ、と息を切らしながら。


「わ、私のこと…」


 肩を上下に動かして。

 ド緊張、してないか?大丈夫か?

 琴坂は意を決して、俺の目を見て一言。


「名前、呼んで」


 ドカーン!


 俺の中で何かが爆発した気がした。

 今日1日、持つだろうか。倒れそうです。


「頑張って呼ぶよ」

「頑張る事じゃない気がするけど」

「とりま、いつか呼ぶから」

「分かった、楽しみにしてる」


 友達になったら、人懐っこくなったもんだ。

 可愛いなぁ、本当に。

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