回想 平柳つばめ視点
「おっはよ!」
「…」
元気のない
机がなんだかおかしいような…。
「何…これ…」
チョークや油性ペンだろうか。
ぐちゃぐちゃに、悪口が書かれていた。
中学2年の冬休み明けの事だった。
※
ことの発端は分からなかった。
私はありとあらゆる手段を使って調べた。
誰が雅をいじめているのか。
理由、きっかけはなんだ。
もう少し我慢して。
私は1日でも早く解決したかった。
※
見付けた、首謀者とその仲間2人。
私はいじめのターゲットになる覚悟で3人に接触。
理由を問い詰めた。
すると、主犯格であるリーダーの女子が呆れたような、私をウザい対象のような感じで。
「好きな人に近付いたから」
耳を疑った。
たったそれだけで?
実行したと?
おかしい。
「近付くな、話すなって言えば済むんじゃ…」
「済まなかったから、攻撃しただけのこと」
狂ってる。
「彼にも言ったの、あんな子より私を見てって」
「それで?」
なんとなく、先は読めている。
たぶん、その人はー…。
「あの子の方が良いって…」
やっぱり、でしょうね。
「だから、ムカついて、悔しくて…!」
今の貴女では振り向かない。
おかしいから。
それを、友達である後ろにいる2人は何故止めない?
「まだ、いじめるの?」
すると、主犯格の女子はニコッと笑い。
「うん!」
そう言って、3人は教室に戻って行った。
※
「みぃ?」
「あっ、つばめ…」
無理やり作った笑顔が悲しくて、チクチクと心を痛める。
「ごめん…止めれない…」
私は謝罪した。
「はは…仕方がないよ…」
1番辛いのは雅なのに、何にも出来ない。
「大丈夫、大丈夫だから」
そう言って、雅は保健室へ行った。
それからは、卒業式前日まで、保健室登校となってしまった。
※
高校生になると、雅は友達を作らないと決めて過ごしていた。
昼休みは必ず私と電話する日課になっていた。
そんなある日の事。
「彼氏が出来たんだ」
『えっ?嘘!』
SNSで知り合った3つ上の社会人だそうだ。
雅にとって初めての彼氏となる。
まだ会った事はなく、遠距離とのこと。
私は少し油断していた。
そういう出会いは当たり前とは言え、先を見通す事をせず、祝福をしてしまった事に後悔する。
※
その彼との話をよく聞くようになり、夏休みに1度会ったそうだ。
手を出さないだけ安心はしていた。
けれども、モヤッとした感覚は拭えない。
冬休みに入ると、また彼に会えると嬉しそうに話していた。
ここで、私は、今回は見送ったら、と言えれば良かった…。
「つばめー!早く早く!」
「なにぃ~おっかあ?」
「雅ちゃんが家に!」
「はぁ!?」
急いで玄関に向かうと、雅は俯いていて泣いていた。
上から下までびしょ濡れ。
「風邪引く、上がって!」
とりあえず中に入れて、真っ直ぐお風呂に直行させて、雅のお母さんに電話して泊まる事にした。
その日の夜。
「ごめんね、迷惑をかけて」
「大丈夫だから」
この世の終わりのような顔で、私は何と声をかければ良いのか分からない。
黙って私は彼女から話し出すまで聞かないようにした。
他愛ない話をしていると。
「つばめ…別れた…」
突然、話題が上がった。
付き合い始めは良かったが、3ヶ月くらいから所謂停滞期に入り、そこからだんだんすれ違いが始まった。
お揃いのキーホルダーがいつの間にか鞄から消えていて、怪しく思っていると、SNSで他の人と仲良く話している所を見付けて。
「我慢していたけど…限界がきてね」
それで今日直接問い詰めたら、彼から「別れよう」と言われたとのこと。
「他に好きな人が出来たから、じゃあねって…」
言葉が出なかった。
「私なんか、まだまだお子ちゃまだったんだよ」
「その好きな人って同い年って言ってた」
「体がどうのこうの言ってたから、相手になる人が結局良かったんでしょうね」
「私は出来ない、他なら出来る…その差、かな…」
私は雅を抱き締めた。
「もういい…ツラいでしょ?もういいから」
すると、「うっ…ううっ…」と雅は次第に声を出して泣きわめいた。
私はただ頭と背中をさすってあげる事しか出来なかった。
次の日、帰り際。
私は途中まで雅を送った。
「それじゃ、またね」
「うん、ありがとう」
たくさん泣いたからか、スッキリしている。
でも、なんだか、何か決意したのか、それがひしひしと伝わる。
「つばめ」
「どした?」
知らんぷりして聞いた。
「私、決めた」
黙って先を促す。
「もう、誰とも関わらない…信用している人以外…絶対…」
もうこれ以上、傷付きたくない、表れだった。
「迷惑だったら言って?すぐ消えるから」
「雅、私達親友でしょ!そんなこと言わないの!怒るよ!」
「つばめ…」
また泣くの?
「こら、泣かないの!」
雅の頬を両手で包む。
「私はずっと雅の味方だから!」
「うん」
「変な人が出たら言って!私がボコりに行くから!」
「うん、うん」
どんなことがあっても、私は雅の味方。
1番の味方なんだからー…。
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