第10話
「…分かったかな?」
まだそんなに仲が良いという訳ではないから、知らない事があってもおかしくはない。
しかし、今の話を聞いて、俺は震えている。
「
心配そうに俺を気遣う
「大丈夫だ、ありがとな」
絞り出すのがやっとだ。
「じゃあ、今から雅虎君は公園に行って」
えっ?何で?
思考停止していると、次の言葉に驚く。
「みぃの事、呼び出してあるから」
えっえっ?
頭がパンク寸前に。
「雅虎君が来るなんて知らないから安心して!」
「あの、なんで…」
まだ半分も理解していないと思うのに。
すると、つばめさんは椅子から立ち、俺の背後に来て。
バンッ!
背中を叩かれた。
「さあ、行って!」
それが合図だったのか、一気に決意が湧いた。
「これ、俺の分、払っといて」
「了解」
「つばめさん、ありがとう」
「いえいえ」
急がないと。
「雅虎君!」
振り返る。
「みぃの事、
俺は頷き、ファミレスを出た。
※
公園の出入口が見えて来た。
全速力で走って来ているから、この後きちんと話せるだろうか。
いや、そんな事を考えている場合ではない。
公園の敷地に入ると、俺は立ち止まる。
「
「琴坂…」
ベンチに座る琴坂の所に近づき、隣に座った。
2人分のスペースが空いている。
これが今の距離なんだろう。
息切れが落ち着いた所で、俺は言った。
「なぁ琴坂?」
「…」
琴坂は俯いて黙っている。
仕方がない、一方通行にしよう。
「今から話すから聞いてくれ。反論などがあれば受け付ける」
琴坂はビクッと反応した。
「大丈夫」
優しく言う。
「怖がんないでくれ」
そう、ただ聞いてくれ、俺の話をー…。
※
「さっき、つばめさんから聞いた」
すると、琴坂は驚いた顔で俺の方を向いた。
「会ったの?」
「この前、ぽちゃおと会ったろ?アイツ経由でな」
「えっ、ぽちゃお君、つばめとお友達?」
「うーん…俺からしたらそれ以上なんじゃないか?」
「…可愛いからね、ぽちゃお君」
「アイツの名前、
「あっ、ごめん」
「いやいや」
ん?脱線してる、軌道修正しないと。
「話を戻す」
「うん」
「聞いて俺は震えた」
そう、世の中にそんな事が起こるのか。
通常ではあり得ない、残酷な事。
俺の周りにはいなかったから、現実にあるのが衝撃的だった。
「…引いたよね」
「いや…でもな」
でも、なんだよ。
「俺は、琴坂ともっと関わりたいと思った」
隣の席同士になったあの日から、俺は君に、いつの間にか夢中になっていたんだから。
「だから、友達、なってくれよ」
この想いはまだ明かさない。
順序立てて、距離を縮めよう。
その始めが、友達。
琴坂は目に涙を溜めて。
「また…また…起こったら、嫌だ…」
ハキハキとした通る声は弱々しい。
「起こらないよ」
「だって!」
「俺がいる!」
頼ってくれ。
「それに…」
どうしようもないな。
「俺らはいくつだ?高校生だぞ?ダッセーことしないだろう」
いじめという、ダサいこと、する歳ではないから。
「もし、起こったら、俺がお前の盾になる」
「えっ…」
俺はベンチから立ち上がって、琴坂の前に立った。
「必ず、護る」
真っ直ぐに彼女の目を見詰める。
吸い込まれそうな、綺麗な瞳に圧倒されそうになる。
数秒、見詰め合ったからなのか。
だんだん琴坂の顔は赤くなっていく。
そして、琴坂もベンチから立ち上がって、俺をドンと押して走った。
ふらついた俺は上体をなんとか倒れないようにして、急いで振り返り、追わなきゃと思ったら、琴坂は俺に背を向けて立ち止まっていた。
そのままで彼女は一言。
「約束、だからね!」
大きな声が公園中に響く。
「ちゃんと、守ってよ!」
と言って琴坂は俺の方に振り向いて。
あっかんべーをした。
俺は拍子抜けしつつ、直ぐに笑った。
「守るに決まってんだろ!」
琴坂も俺の笑いにつられたのか、初めて彼女の笑顔を見た。
太陽のように輝き、ひまわりのように可愛かった。
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