第7話
「放っておけない、から」
正直に言ったが、本音は伏せた。
それは、まだ確信が持てないから言えなかった。
“気になっている”と…。
確信が持てた時、初めて言えるこの言葉。
今は内に秘めておく。
「そんな…」
「嫌か?」
苦しそうな表情の
俺は彼女にとって、とんでもない事を言ってしまったのだろうか。
「嫌な思いをしたなら、あやまっ…」
「それはない」
怒ってる?
「本当に、それはないから」
大丈夫か?
「ただ…」
「ただ?」
黙って耳を傾ける。
「これ以上、関わらないで!」
そう言って、琴坂は1人で教室に戻って行った。
「なんか、あったんかな」
俺は彼女の過去なんか知らない。
きっと何かあったはずだ。
1人で行動するその理由が、孤高へと繋がったのだろう。
俺はぶしつけかもしれないが、本人から聞き出す事は直に土足で踏み入れるようなものだから、他から聞き出すしかない。
まっ、他から聞き出すのも間接的とは言え土足で踏み入れてるようなもんだよな。
すまない、踏ませてくれ。
しかし、一体どうやって調べる…あっ!
「アイツなら、顔広いはず」
思い立ったら吉日。
直ぐに行動した。
※
「よっ、
「やあウッキー、元気だった?」
「猿じゃねーよ」
「
「はぁ…」
隣のクラスにいる、俺の幼馴染みの三瓶
久しぶりに会ったが、相変わらずニコニコ笑顔だ。
髪は天パでくるんくるん、目はくりっとしていて、身長は167センチに対して体重が80キロと、ぽちゃっとしている。
それでいて、ぽやんとしていて、マスコットキャラのような雰囲気で、一部の女子から癒しの対象として見られている。
「それで何かな?」
首を傾げて俺に用件を聞いた。
「頼みたい事があるんだ、情報を集めてくれ」
「良いけど、ご褒美は?」
出た、ご褒美という調べ物の報酬。
「後でだ、急ぎなんで」
「うーん…やる気出ない」
肩を落とす三瓶。
元気なくすな、勘弁してくれよ。
仕方がない、こう言おう。
「分かった、お前が決めろ」
「え、良いの?ならねぇ」
のんびり口調だな、全く。
数秒考えて三瓶はこう言った。
「ケーキ、ホールで」
「出費は痛いが、まあ良いだろう」
「分かった、じゃあやるね!誰を調べれば良いのかな?」
俺は小さなメモ紙を渡した。
2つ折りの紙を三瓶は開き、キョトンとする。
「珍しい、女の子の事を調べてなんてさ」
「しっ!勘違いされる」
「あはは、大丈夫大丈夫」
無防備過ぎなんだよ。
「ちょっと時間掛かるかも、1週間は待ってね」
「おう」
「遅れが出たら連絡するね」
「ありがとな」
「ホールのケーキ、楽しみにしてるね~♪」
あー、俺の今月の小遣いが、ホールのケーキに消えていくなんて…。
仕方がない、腹括ろう。
三瓶のパソコン能力と顔の広さを信じて。
※
1週間は経過した。
案の定、三瓶から『もう1週間待って』と連絡がきた。
手こずるとは、予想してはいたが。
『琴坂さんの情報、あんまし掴めなかったら報告書は紙1枚になっちゃうから、ご理解を』
との文言付き。
三瓶でも無理なのか。
諦めの気持ちに苛まれる。
三瓶の結果待ちで、早起きしてもサッと行けなくなっていた。
また声もかけない、というか出来なかった。
語気を強くして、関わるな、と言われてしまい萎縮中。
「あの日々が、また来て欲しい」
そう願って待つ。
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