第3話
早起き出来た日は、さっさと準備して学校に向かうようになっていた。
何故だろう?
そんなことを思いつつ、教室に入るとやはり居た。
「おはよう」
「おはようございます」
俺は自分の席に着き、鞄から教科書などを机にしまう。
いつの間にか、琴坂が勉強する所を眺めるのが好きになっていた。
まじまじと見ると怒られる為、チラッと。
さりげなく、こっそり見るのだ。
横顔、綺麗だな。
眼鏡からコンタクトにすれば良いのに。
似合うぞ、絶対。
言ったら怒られるかな?止めよう。
今日も今日とて、俺はマイペースに過ごす。
今日の体育って確か…回って踊るんじゃなかったか?
※
「全員、位置につけー!」
体育教諭の指示に従い、全員位置につく。
大きな輪を作った。
と言っても、外側男子で内側女子、それぞれの輪、上から見ると二重丸になるのだ。
「よし、曲かけっから躍りながら回れよー!」
「「「はーい」」」
「んじゃ、スタート!」
音楽がCDラジカセから流れた。
今回はフォークダンスである。
ペアがどんどん変わるという。
思春期真っ只中の高校生、手を繋ぐ行為自体、ドキドキものだ。
無になるのだ。そう思っていると…。
琴坂とこんにちは。
「よろしく」
「はい」
こういうの苦手なんだろうな。
ヒシヒシと伝わる。
だって機嫌悪いんだもん。
むすっとしているし。
そんなに嫌なら休めばいいのに。
すると曲の良い感じの所で音楽が止まった。
「5分休憩ー、最後にマイムマイムやっからな!」
「「「はーい」」」
「さっきの位置覚えとけよー!」
ということで、5分の休憩。
クラスメイト達は一斉にいつもの友達と合流してしゃべり出す。
体育館が賑やかに。
「よっ」
「おう」
「女子と手を繋ぐ…ヤベェな」
「はいはい」
「んだよ、緊張しないのか?」
「するよ」
「だろう?」
なんかニヤニヤしてないか?
「次、マイムマイムってことはよ、ずっと手を繋ぐわけだな」
バカだコイツ。
「俺の両手の華はまさに華」
あー、学年で上位にモテる女子だっけ。
「可愛い
はぁ…マジでバカだコイツ。
俺は…あー、うん。
「
「それがどうした?」
「琴坂さんの隣は右にお前で左に
嫌がられるなこりゃ。
いや待てよ?
両脇男子なら不機嫌でも、俺だけなら…。
「機嫌、なおるかな…」
「はぁ?」
心の言葉がそっくりそのまま口に出してしまった。
磯辺の顔は間抜けに磨きがかかった。
※
「ほんじゃ、手を繋げ!」
体育教諭の指示に従い、全員手を繋ぐ。
「痛くないか?」
「大丈夫です」
うーん、不機嫌じゃん。
「んじゃ、スタート!」
曲が流れた。
振り付け通りに踊る。
歌う所は歌い、掛け声だって忘れない。
ふざけた男子(磯辺を中心に)がバカデカイ声で盛り上げる。
すると笑いがドッと溢れた。
楽しくやるのが1番だよな。
俺は琴坂の様子を見る。
おっ?
ちょっとだけだが、優しい表情になっていた。
なんだ、楽しそうで良かった。
俺は琴坂の手を労るように、なるべく優しく繋ぐ事を意識して踊るのだった。
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