大晦日のラプソディー
読天文之
第1話大晦日のラプソディー
十二月三十一日、大晦日。
一年の最終日であり、冬の一大イベントの一つでもある。
昨日は彼女の咲奈とラインで連絡がついた、大晦日に俺の家で新年を迎えることが今日の予定だ。
咲奈には今日の午後八時に、年越しそばとして緑のたぬきを買ってくることになっている。
おれは咲奈に会うのが楽しみで仕方なくなっている、まだ会ってもいないのに心臓がドキドキしている。
咲奈と出会ったのは二年前、大学の野鳥観察サークルでの出会いだった。
バードウォッチングのオタクというわけではないが、アウトドアが好きなおれにとっては楽しいサークルだった。
咲奈は大学二年の時に出会った後輩、ツインテールが可愛い明るい感じに見えるが、意外とおしとやかでそこがまたギャップがあっていいのだ。
そして出会って三か月後に、一世一代の告白をしたが・・・、ふられた。
しかしおれは諦めきれずにアタックを重ねていき、そして大学三年の五月に付き合うことが決定したのだ。
それからおれと佐奈は何度もデートを重ねていくうちに、互いの魅力に気づくことが増えていつの間にかラブラブになっていたんだ。
それで現在にいたる、今は午後七時。
後一時間で、佐奈がやってくる。
そしておれはふと、部屋が汚れていることに気づいた。
普段からおろそかにしていたからなあ・・、佐奈がくるまでに少しでも掃除しておこう。
何日かぶりに掃除機を動かして、ゴミを片付けて、マンションの近くにあるゴミ置場へ持っていく。
そして部屋に戻ろうとマンションに入ろうとした時だった、後ろから声をかけられた。
「やあ、何をしていたの?」
佐奈だ、来るまでまだ十五分もあったんだが。
「あー、ちょっと部屋の掃除をしてた。」
「もうすぐ新年なのに・・・、悪あがきしてるみたいでおかしい〜」
佐奈はクスクスと笑った。
止めろよとおれも、笑いながら佐奈に言った。
そしておれと佐奈はおれの部屋へと入っていった。
そして二人で緑のたぬきを食べようと佐奈が持っていたビニール袋を覗いた時だ、緑のたぬきと赤いきつねが一つずつ入っていることに気づいた。
「あれ?なんで赤いきつねがあるんだ?」
「ごめんね、コンビニに行ったら緑のたぬきがラスト一つしか残っていなかったのよ。だから赤いきつねも買っちゃった、どっち食べる?」
ここは佐奈に優しさを見せるため、赤いきつねを選択した。
「じゃあ、緑のたぬきはもらうね。そうだ!完成したら、互いに一口ずつ食べようよ。」
おれは佐奈の提案に乗り、赤いきつねと緑のたぬきにお湯をそそいだ。
そして二人でテレビの特番を見ていた。
「ねえ、この一年を振り返ってどう?」
佐奈がおれに質問した。
「この一年か・・・、やっぱり君に告白して良かったと思う。」
「やっぱりそれ?私はねえ・・・、バードウォッチングサークルに入って良かったことかな。」
「あー、そういえば佐奈は結構真面目にサークル活動していたからな。」
「うん。ただ今年は一つだけやり残したことがあるんだよね・・・。」
「それって何?」
「プッポウソウを見られなかったこと、会いたかったなあ・・・。」
プッポウソウは赤いクチバシと黒い頭と青い胴体を持つ鮮やかな鳥、夏にユーラシア東部とオーストラリアから渡ってくる渡り鳥だ。
「そうだね、二人で探したけど結局会えなかったなあ・・・。」
話しているとすでに五分を過ぎていた、おれと佐奈は赤いきつねと緑のたぬきを食べ始めた。
「じゃあ、まずは互いに交換ね。」
俺は緑のたぬき、咲奈が赤いきつねを食べ始めた。
そして再び交換して、食べ始めた。
「はぁ~、カップ麵を食べているのにいつもより美味しい。どうしてだろう?」
佐奈は不思議そうに言った。
それは君と二人で食べているからだよ・・・、なんてかっこいいセリフは言えなかった。
佐奈がそばにいるとホカホカする・・・、きっと佐奈も同じ気持ちだろうな。
そしておれと佐奈は食べ終えてからもホカホカした気持ちのまま、おれと佐奈は新しい一年を迎えたのだった。
「明けましておめでとう、これからよろしく。」
おれからも同じ言葉で佐奈に言った。
大晦日のラプソディー 読天文之 @AMAGATA
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